店名は60年代のアメリカンポップスから
カフェは築40年の一軒家の2階にあり、居酒屋の宴会場だった空間を自分たちの手でリノベーションしたもの。広い壁面にずらりと並ぶ古いエアコンの数々は、かつて個室が並んでいた名残です。1階では古くからの居酒屋が現在も営業を続けています。RAIN ON THE ROOFと書かれたガラスの引き戸を開けると、木の階段が2階へと続いています。階段の一角には、さりげなくキャンドルと小さな花。
ゆったりサイズの黒いソファが並ぶ店内の天井は高く、梁がむきだしになっています。ほどよい音量で流れる古いアメリカンポップスがよく似合う空間。女性店長の中島さんが教えてくれました。
「まるで、おじいさんが孫娘に遺した山小屋か納屋みたいだねと、改装する前のこの建物を見て、あるアーティストのかたがおっしゃったのです」
そのアーティストとは、カフェと言葉が両方とも好きなひとなら、彼の本を1冊くらい持っているだろうと思われる有名な男性。美しい店名も彼が名付け親なのだとか。
「RAIN ON THE ROOFはラヴィン・スプーンフルの曲のひとつ。そういえばいい曲だよね、とそのかたがおっしゃって、店名につけてくださいました」
You and me and rain on the roof……と歌われるRAIN ON THE ROOF。60年代後半のアメリカで活躍したラヴィン・スプーンフルの音楽は「グッド・タイム・ミュージック」と呼ばれていました。
夏の草原で、跳ねるような夕立に追われて駆け込んだ納屋が、こんな居心地の良いカフェだったら最高ですよね。雨音もいきいきと聞こえることでしょう。