原型はヨーロッパのオープンカフェ
初代の山口オーナーは新橋で飲食店を経営。東京都の職員がヨーロッパを視察で訪れた際に、人々がオープンテラスのカフェでコーヒーや食事を楽しむ姿に触れ、「ヨーロッパのカフェ文化を日本にも」という提案を山口オーナーに持ちこんだのだそうです。
その提案を受けて1949年にオープンした日比谷茶廊は、当時の東京の人々にとっては新奇な存在だったにちがいありません。風の吹きぬけるテラスでの飲食というスタイルは、日本人にはまだなじみがなかったのです。
「当時はすぐ近くの商工会議所の中に将校クラブがあり、その流れで米兵たちがよく来店していたようです」と三代目の山口兼嗣さん。
日比谷茶廊は1995年まで45年間にわたり同じ場所で営業を続けましたが、建物が老朽化して傾いてきたため、現在の場所に移動。背の高いヒマラヤ杉をはじめたくさんの樹々と花々の香りに包まれたテラスは、銀座界隈のにぎわいが遥か遠くに感じられる、快い静けさに満ちています。
このカフェを訪れた人々の中には、ミック・ジャガーの姿も。
「初の来日公演中、ミック・ジャガーは毎日のように公園内をジョギングしていたんです。いつもボディガードを連れてお店の前を走っていったのですが、ある日そのままテラスに入ってきて、コーヒーを飲んでいきましたよ(笑)」