充足感ある味わいの本格派
A.K Laboの名前は、オーナーである庄司あかねさんの「あかね」と、フランス留学中にお菓子工房を指す呼び名だった「ラボ」をあわせたものだそう。1階には心が躍ってきょろきょろ見回してしまう季節感豊かなお菓子やパン、コンフィチュールなどが美しく並んでいますが、毎日これらを焼くために庄司さんがお店の工房に入るのは早朝5時。お菓子とパンを焼く人の朝はとても早いのです。庄司さんはデザイン事務所の出身。エディトリアルデザイナーとして料理誌の誌面を手がけるうちに、自分でも趣味の範囲を超えてお菓子作りを追究したくなり、1997年にフランス、サンテチエンヌ郊外にある製菓学校へ留学。卒業後はフランスのカフェや東京の洋菓子店で経験を重ね、2003年にA.K Laboをオープンしました。
庄司さんの記憶に残るお菓子は、子ども時代にお母さんと作ったドーナツだそう。
「家には子どもが3人いましたから、5人ぶんのドーナツを作るとなるとたくさんの量ですが、揚げたてのドーナツに砂糖がけをするお手伝いを楽しんでいました」
そんな庄司さんが好きなのは、伝統的なフランスの焼き菓子だといいます。
「気軽に食べられるけれど、しっかりとした噛みごたえと、きちんとした甘さのある焼き菓子。それが理想です」
そう、現在の東京は世界でいちばんスイーツが甘くない都市。極限まで甘さを控えたお菓子や、ふわふわにやわらかいお菓子が主流で、なぜか「甘くないほどエライ」「やわらかいほどエライ」といった風潮がありますが、私はときどき首をかしてげいました。しっかりした歯ごたえや、バランスのとれた甘さこそ、本当に素材の持ち味を活かした満足のできるおいしさなのではないでしょうか?
A.K Laboの大きな魅力は、フランス菓子は本格派のおいしさながら、カフェならではの気軽なくつろぎ感に満ちていること。「散歩のついでに、おやつを食べにいらしてください」と、読者の皆さまに庄司さんからメッセージをいただきました。