21歳、ロンドンのカフェで
10年前、冒険的旅行の必需品『地球の歩き方』さえ持たずにロンドンに出発した三浦さん。「まあなんとかなるさ、と考えていたら、どうにもならなかった(笑) アパートっていったいどうやって借りるんだろう…と困惑していたら、偶然入ったカフェの壁に『FOR RENT』と貼り紙があるのをみつけたんです。それを見てもまだよくわからなかったのですが、お店の人が話しかけてきて、筆談で丁寧に教えてくれて本当に助かりました」
それをきっかけにそのカフェで友人を作っていったという三浦さん。カフェは知らない人間どうしを結ぶ空間だという考えは、身をもって体験したことから自然に生まれていったようです。
「親切にしてくれたお店の人は中東系の2世でした。彼らは偏見を持たれているし、差別も受けています。でも、僕は彼らと知り合ったおかげで、新しい価値観に出会うことができたのです」
カフェは人との出会いをつくる場所
「喜怒哀楽や、さまざまなできごとに出会わせてくれるのは、やっぱり人ですよね」なによりも人を大切にする三浦さんの考えがお店の空気に反映されているせいでしょうか、TOKYO FAMILY RESTAURANTには、なぜかおもしろい仕事に携わる人々、刺激的な仕事をしている人々が集まってきているようです。
「何かを企みに来ている人が多いですね(笑) おもしろいことを考えている人と人どうしが、自然に知り合って新しい企てが生まれていくような場所にしたいといろいろ考えています」と三浦さん。
「高円寺のマーブルの常連のお客さまが偶然にこの店を見つけて入ってきてくれて、お互いにびっくりしたり……不思議にそんなことが多いんですよ」
本当に、ご縁というのは不思議なものですよね。でも私は最近そんな幸運なご縁の秘密を、少しだけのぞいたような気がしています。なにかいいことくださいとお願いしてばかりの人のもとには、どうやらラッキーな出会いはあまりめぐってこないようなのです。まわりの人を大切にして、いっしょに楽しもうという気持ちを惜しみなく与えている人のもとにこそ、ラッキーな出会いはぽろぽろと降ってくるのですよね。
それを裏づけるのが、三浦さんをはじめこの場所で働く人々の自然な笑顔。扉を開けるとまず、入口のバーカウンターでチンバリのエスプレッソマシンとハイネケンの陶製ビアサーバーに囲まれて立つ濱田大介さんが気さくに迎えてくれます。店内に足を踏み入れるにつれ次々に出会っていく各スタッフの笑顔や、行き届いた目配り、きびきびした動作が、この空間をいっそう快適なものにしています。