かつては老舗洋菓子店の工場だった、広い空間
TOKYO FAMILY RESTAURANTは、カプリチョーザなども入店している「カミニートビル」の3階にあります。築30年になるこのビルは、当初は三越が入居する計画もあったそうですが立ち消えになり、その後、3階は老舗洋菓子店の工場として使われていました。カフェとしてはちょっと驚くほど広い、不思議な雰囲気のある空間です。
バイオリン弾きがテーブルを回り、お客さまが踊って…
ある夜、二人で食事に訪れたときのこと。ビルの階段をのぼっていくと、TOKYO
FAMILY RESTAURANTの開け放った扉から、心をわしづかみにするようなバイオリンとギターの生の音色が洩れてきました。店内に足を踏み入れて、一瞬、キューバ音楽系のライブが行われているのかと思いました。楽器を手にした二人組がDJブースの前に立って演奏していたのです。
聞けば、20名くらいのお客さまのパーティーとのこと。スペインに移住するプロの演奏家2人のためのお別れ&お祝い会のようでした。お店と幹事さんとの間で「店内で楽器を演奏してもOKです。そのかわり他のテーブルのお客さまも楽しませてあげてくださいね」という約束が交わされていたのでしょうか、彼らは素晴らしい音を響かせながら私たち二人のテーブルにもやってきてちょっとサービスしてくれたのでした。
ブエナビスタ・ソシアルクラブのメンバーとも共演したという2人は、聴衆を楽しませる術をよく心得ているのでしょう、ソンに合わせて手拍子で歌う人あり、立ちあがって踊る人ありの盛り上がり。パーティー参加者以外の人々もごく自然に音楽と熱気を享受することができました。
その夜は、私がカフェで出会った名場面のひとつとして、ラテンのリズムとともに忘れられない記憶になりました。