ル・リオンには毎日通ってくるご老人がいます。
「高級な料理やワインを出すレストランでも、じつは求められているサービスはカフェとそう変わらないんじゃないかと気がついて」と須田さん。
「かしこまったサービスではなく、天気の話から日常のできごとまで、なんでもない気軽な会話が交わせることを望むお客さまも多いんです」
聞けば、レストラン時代の須田さんのお客さまで、ル・リオンがオープンしてからは毎日のように通ってきてビールかワインを1杯飲み、世間話を楽しんで帰るのだとか。
かつての仲間たちが結集
時が満ち、かつてNid Cafeで活躍した顔ぶれが自然に揃って2006年夏にオープンしたル・リオン。2001年のカフェ・ド・フロール閉店時に須田さんたちが買い取った赤いベンチシートは、その後Nid Cafeで多くの人々を迎え、やがてQahwaで新しい多くの人々をもてなしたあと、今はほっとしたようにル・リオンにおさまってもうひとつの時代の始まりを見つめています。東京のカフェとフランスのカフェのスタイルを肌で感じ続けてきた須田さんたちの店づくりの信念は、おそらくは「ざっくりしていて、楽しくて、パリの伝統的カフェのスタイルを踏襲しながらも、ふるまいは自由であること」。私はそのように感じました。だって、それがカフェの真髄でしょう?という彼らの声が聞こえるような気がします。
「お酒を飲みたければ飲みに、お茶を飲みたければ一杯だけエスプレッソを飲みに、食事をしたければ食べに、全部したければ全部しにいらしてください」と須田さん。
「なにをしてもいいことが、カフェの良さですから。チェスやトランプ? 喜んでお相手します。ただし、僕が勝ったらご馳走していただきますよ(笑)」