おいしいものだけ、ていねいに


2005年6月、JR高円寺駅北口から徒歩5分、「庚申通り商店街」に面した古いアパートの2階に、喧噪を逃れて静かな時間を楽しめるカフェが誕生しました。築40年のアパートは長い間空き家になっていた物件。階段をのぼっていくとまず目につくのが、かつての面影を残す共同の下駄箱。ここに学生たちが何人も下宿し、無造作に靴を並べていたのでしょう。カフェは四畳半の部屋を2つと、6畳の部屋をつなげて改築した落ち着いた空間で、柱や天井の梁は当時のまま、ひっそりと陰影を宿していました。

にぎやかな商店街にあって控えめなカフェの看板は目立つわけもなく、おまけに入り口は路地に回り込まないと見つかりません。だからカフェ花鳥風月を訪れるのは、わざわざここで過ごす時間を目的に階段を上がってくる人々。そんなお客さまに満足していただくために、オーナー・大槻洋次郎さんは試行錯誤を繰り返してたどりついた自信のパスタ8種類を中心に、お酒のあてとしても楽しめる一品料理を揃えています。

「<とりあえず>的に置いてあるメニューはひとつもありません。ドリンクひとつとっても、なぜそれを選んだのか、お客さまに尋ねられたときにきちんとお答えできるものだけを選んでいます」

「おいしいものだけ、ていねいに」を心がける大槻さんの選択は、たとえば高円寺の自家焙煎コーヒー豆専門店ジャンゴの豆や、ご自身が愛飲するスリランカの黒ビール「ライオンスタウト」、 石川県丸八製茶場の加賀棒茶。ジンジャーエールは自家製しょうがシロップで手作りし、ランチセットなどのドリンクにも業務用の製品はいっさい使わないこと。なるほど、「まあこんなものを揃えておけばいいでしょう」という姿勢の対極にあるメニューです。