心を惹きつけるものばかりの店内
店内は古い建物特有の美しい陰影と、肩の力の抜けた空気と、根底に流れている作り手自身の清潔感が大きな魅力となっています。菱形を描く深緑色の窓枠。小さな古い書棚に並ぶ本。窓辺に無造作に置かれた苔玉、丸い小石と落ち葉。壁に下がる丸いガラスは眼鏡だったのでしょうか。さりげないのに心を惹きつけるものばかりです。
もとは下宿として使われていたこの空間は、ミケネコ舎がオープンする直前まで4畳半2間の住居だったそう。レジカウンター横の白壁にはドアの木枠が、鍵穴をつけたままオブジェとして取りつけられていますが、その鍵は元の住人が現在も所有しているといいます。こんな美しいカフェの秘密の鍵を持っているとは、なんと幸運な人でしょう。たとえその鍵を回したところで、壁は開かないにしても。
信州の料理研究家の飼い猫にちなんで
ミケネコ舎のオーナーは太田原夫妻。軽井沢のスペシャルティコーヒー ロースター「丸山珈琲」で働いていた太田原一隆さんと、信州の女性料理研究家のアシスタントをしていらした奥様の美保子さんとが、実家のある東京に戻って2005年春にミケネコ舎をオープンしました。 この人がこのカフェの空気を作っているのだ、ということがよくわかるお二人です。店名の由来となったのは、料理研究家のもとで飼われていた三毛猫グレコ。三毛猫の毛なみは白・黒・茶色の三色ですが、ミケネコ舎の黒は、挽きたての豆を使ってコーヒープレスで淹れるとびきり風味豊かなコーヒーの色です。茶色は店内に並ぶ、時を経たアンティーク家具の色。そして白は、しんと静かな空間を流れていく時間の色。
ミケネコ舎のフリーペーパー「月刊ねこじゃらし」では、お店の新しいコーヒーやメニューの紹介、小さなコメントなどに混じって、太田原さんが落書きした(?)グレコの画も見ることができます。(主観的には、いささか目つきの悪い、ふてぶてしさがチャームポイントの猫に見受けられます)
Webでの情報発信が主流のなか、こんな素朴なフリーペーパーを手に取る楽しみもまた、捨てがたいものですね。
▼コーヒープレスで淹れるコーヒーと、あたたかなスイーツ。