自家焙煎珈琲と、百塔の街プラハ 

アルプス洋菓子店以外にカフェ好きの心をとらえるお店が見あたらなかった駒込駅界隈が、百塔珈琲の登場で一躍「おいしいコーヒーが飲める街」に変身しました。
マンションの階段をのぼった2階に、アンティークの木製扉があります。

マンションの階段をのぼった2階に、アンティークの木製扉があります。

印象的な店名を目にした瞬間に浮かんだのは、チェコの首都、「百塔の街」と呼ばれる古都プラハ。

はたして店主、李容氾(り・よはん)さんと簡単なメールをやりとりすると、李さんがかねてよりフランツ・カフカの小説やシュヴァンクマイエルの映画などのチェコ文化に心惹かれており、用意した幾つかの候補の中からプラハを意味するこの店名を選んだことがあきらかになりました。
白い書架にはロルカ、クリシュナムルティ、ボルヘス、ユング。マイヤ・ヘスのLPレコードも。

白い書架にはロルカ、クリシュナムルティ、ボルヘス、ユング。マイヤ・ヘスのLPレコードも。

李さんは主に堀口珈琲でコーヒーを学び、2010年5月、駒込駅にほど近いビルの2階のこぢんまりした一室に百塔珈琲をオープン。古いビルを塔に見立てるささやかな遊びができること、窓から駅の方角をのぞめばゆるやかな上り坂が遠くまで見渡せることが、この物件選びの決め手となったといいます。

アールデコ時代のフランスのものという木製の扉を開けると、真っ赤な焙煎機と銀色の排煙ダクトが視線をとらえます。壁際にはガーネット色のベンチシート。窓辺に並ぶ木製の椅子やランプシェードはアンティーク。

現代的なスペシャルティコーヒーの世界と、中世ヨーロッパの色濃い迷宮都市の取り合わせの妙に、私はすっかり魅了されてしまいました。
もとはオフィスとして使われていた一室。クラシック音楽が流れて、隠れ家のような気配。

もとはオフィスとして使われていた一室。クラシック音楽が流れて、隠れ家のような気配。

とはいえ、店名にひっかかったり、書架に並んだ本の背表紙をじっくり眺めたりしない限りは、百塔珈琲はあくまでコーヒーのおいしい、気持ちよく過ごせるカフェ。常連客の中には90代のおじいちゃんもいて、若い奥さまといっしょに「駒込ブレンド」を楽しんでいるそうです。

さっそくコーヒーと自家製のケーキを注文してみました。ブレンドは4種類、ストレートは8種類ほど。次ページでご紹介しましょう。