イタリアを南から北まで
東京・初台のカフェで初めて目にしたデザインカプチーノ、そして1996年にスターバックスが銀座に1号店をオープンしたときに飲んだカプチーノが、洋之さんがバリスタを自分の職業として考える原点になりました。本物の味を体験するため、イタリアのバールも視察して回りました。
「イタリアの南部から北部までたくさんのバールでエスプレッソを飲みました。どのバールも、抽出方法はけっこうアバウトだったんですが(笑)」
イタリアの地方色を体験し、飲み比べるうちに自分が目指すべきエスプレッソの味が明確になったといいます。
「南の地方では濃くてどろっとした深煎りのエスプレッソが飲まれていますが、北のミラノでは比較的浅煎りの上品なエスプレッソ。当時の僕は苦いものが苦手で、ミラノのエスプレッソが一番おいしく感じられ、そこのバールが使っていたイタリア製エスプレッソマシンを自分の店に導入しました」
人生のベスト・エスプレッソは?
ミラノのエスプレッソこそ最高と思っていた洋之さんの転機は、ノルウェイのカフェで飲んだエスプレッソでした。「世界バリスタチャンピオンシップの優勝者のカフェがノルウェイにあると知り、連れていってもらったんです。そこで飲んだエスプレッソはバランスが完璧で、コクがあって本当においしかった。それをきっかけに、自分の味が変わっていったんです。より力強く、余韻の豊かな味に」
ノルウェイのカフェのドリンクはどこもレベルが高く、空港内のごく普通のカフェでもマニュアルのマシンでエスプレッソを淹れていました、と洋之さん。そういえば、今年のバリスタチャンピオンシップで優勝したのはデンマークでした。北欧の国々ではおいしいエスプレッソが飲まれているようです。
「今は、ケニアの豆がおもしろいと感じています。モカの柔らかい酸味とはまた違って、レモンのようなパワーのある酸味なんです。ケニアが一割ブレンドされているだけで、エスプレッソのあと味が全然違う。また、ケニアの中でも産地によって、フレーバーがマスカットだったりピーチだったりと違いますし、焙煎方法や抽出方法によってもまた変わってきます。そんなブレンドを試行錯誤するのも大きな楽しみのひとつです」
これまでにたくさんのエスプレッソやカプチーノをお客さまに提供し、ご自身も各国でさまざまなドリンクを味わってきた洋之さんですが、今後はどのような目標を抱いていらっしゃるのでしょう。