「汚いお店こそ美味しい」といわれていたのは今や昔の話。今時のラーメン店は女性も安心して入れるような作りにしなければならないのだ。その最たる例が西新宿にある最低1時間待ちは覚悟しなければならない「麺屋 武蔵」であったり、前回紹介した「らーめん愉悦処 鏡花」なのである。今や「汚い店=不味い店」と考えた方が無難であろう。しかし、絶対そう言い切れないラーメン店もごくたまに存在する。今回紹介する京急線新馬場駅そばに存在する「イレブンフーズ」はそういう「外観はまったくそそられないが食べるとなぜか納得してしまう」という絶滅種に近いラーメン店なのである。


初めて食べた時のあのショックは今でも忘れられない。何年か前、インターネットの情報を頼りにいつものごとく自転車でお店を探索。山手通りを北上し、第一京浜をこえ小さな路地を確認しつつ、目的の店を探索する。クルマ1台がどうにか通れそうな路地に「イレブンフーズ」の看板を発見。急いでお店に近づく。しかし、どう考えてもそそられない小汚い店構え。普段なら絶対入らないお店だ。しかし店内はほぼ満員。というわけで勇気を出して店内へ。で、厨房を覗くとやっぱり汚くて、くたびれたおばあちゃんが無気力そうに麺茹でをしている。「参ったなー」と後悔しつつセルフサービスのお冷やを注ぎ、空いてる席に座ろうとしたら、そのおばあちゃんが「注文は?」と聞くので脊髄反応で基本メニューのラーメンを注文した。(私は、初めてのお店では基本メニューを頼むようにしている。)で、驚いたことにそのおばあちゃんはすでに先客の麺を茹でている寸胴に私の分の麺を投入。「おいおい!茹であがりがバラバラになるよ」と私の心の叫びは届かず。麺茹での間、おばあちゃんは具を用意している。ここでさらに驚く。キクラゲを厨房の中に
ある洗濯機!より取り出したのだ。う~ん、これまで4000杯以上のラーメンを食べたが、具を洗濯機から取り出したお店は前にも後にもこのお店だけである。


ドンブリが用意され、それぞれにタレ、スープが投入される。しかしその数は8杯!絶対というわけではないが、1度に作られる杯数と味は反比例するケースがほとんどだ。で、いよいよ麺上げ。緩慢とした動きのおばあちゃん、麺上げもスローモー。しかも湯切りが甘い。そして具の盛り付けもかなりいい加減。ハー。(ため息)


出てきたラーメンは白濁のスープに太目の麺が泳いでいる。具は大き目のチャーシューに乱切りタマネギ、キクラゲ、ワカメ、海苔。恐る恐るひと口。トロミを感じるスープは豚骨と野菜を煮込んだものと思われる。油は強くなく、ほんのり甘味を感じる。さらに麺も全然伸びていない。十分なコシがある。タマネギやキクラゲが食感を豊かに演出。そしてチャーシューはジューシー。


食べ進むうちに絶望が幸せへと昇華していく。良い経験だ。それにしてもこのお店は最後まで怪しく、集金は自己申告制によるザルへの投入。味以外はまったくそそられない不思議なお店だ。でも食べるたびにまた食べに来ようと思わしてくれるくらい魅力的なラーメンである。そうそう、人気のちゃしゅう(いわゆるチャーシュー麺)は限られた時間しか食べられない。9時半から昼までには売り切れている。食べたい人は時間を狙って食べに行こう!


イレブンフーズ
品川区東品川1-34-23
8:00 ~ 18:00 / 土曜は、 ~ 14:00
日曜定休
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