安全の副産物が、おいしさだった!
大西ハーブ農園で飼育中のヤギは、セージハーブをよく食べるそう |
大西ハーブ農園は、無農薬のハーブ野菜を育てる、北緯40度の農園。畑は、六戸町と八甲田の2ケ所にまたがります。
両畑とも、基本となるのは、スコップとカマとハサミのみの農業。ここでは、おいしいハーブを作ろうなどとは一切考えず、身体が安全で喜ぶものをと思った結果、副産物としてついてきたのが、おいしさなのだそう。
そのため、虫が嫌う植物などコンパニオンプランツは実践するものの、それを越えて入ってきた虫に関しては、見つけても、焦らず、騒がず、そのまんま。大西さんいわく、「虫も植物も人間もつながっている。殺虫剤で虫の命を断ち切れば、必ずそれは人間に返ってくる。排除せず、共存するのが、モットー」。
堆肥の説明をする大西さん(左)と横江シェフ(右)。 |
と聞くと、畑には、見るも無残に穴だらけな植物もあるのではと思ってしまいますが、それはまるで逆。
草を堆肥にすることで、草が吸い取った養分ごと、土に返すという考え方や、落葉がミミズのエサとなり、そのミミズの排泄物が良質な土を作るという自然な環境が、ちょっとやそっとの虫の侵食もものともしない、生命力の強い植物を作るのです。
作り手と使い手の植物の嫁ぎ先談義
右上:ラディッキオ 左下:ナスタチウムの葉 |
そんな大西ハーブ農園で、大西さんと横江シェフがかわすのは、植物の嫁ぎ先談義。
「このラディッキオを送ったら、どういう使い方する?」と大西さんが聞けば、横江シェフがすかさず葉を一枚食べ、「苦味がしっかりしているので、火を入れて変色しないのであれば、巻いて蒸してもいい」。
「でも、匂いもあるので、軽く焼いて、パンチェッタと一緒にビネガーでサラダにするのもいい」と横江シェフ。「その場合、葉は小さめの方が使いやすい?」と大西さんが聞けば、「はい。小さめでまるまってる方が料理しやすいです。つぼみのままの方が、中に芯があるので、焼きやすい」。
左上:エンダイブ 右上:スペアミント 右下:ルッコラセルバティカの花 |
また、近くで生育していた「エンダイブ」に話が移ると、「横江さんの好きなサイズは?」と大西さん。「僕はひと口サイズが好みです。大西さんのハーブは味が強いので、小さくても主張がある」。
食べられる花は、シェフの心を奪う
大西さんが持っているのは、ナスタチウムの花、葉、インカトマト |
そんな二人のやり取りを聞いていると、どんな植物も、作り手と使い手がいてこそなのだと実感。中でも、特に横江シェフの興味を引いたのは、ハーブの花。現在、70~80店から注文を受けるという、大西ハーブ農園の人気商品でもあります。
そのうちのひとつ、ナスタチウムは、ハイビスカスのような真っ赤な花が特徴。葉はワサビの味がして、少々辛いですが、花が甘みと苦味を持っているので、一緒に食べるとちょうどいい植物。
ナスタチウムの花を食べる横江シェフ |
花が終わったあと、グリーンの種ができますが、これもワサビそのものだそう。葉は、お弁当に2枚ほど入れておくと、腐食を防げるという作用もあるそう。
横江シェフいわく、「姿がいいので、ちぎると逆に、お皿の上での商品価値がなくなる。小さい葉のまま、マスタードの葉と一緒に料理の下に敷き、畑のようなひと皿に仕上げてみたい」。ああ、その言葉は、もうこの時点で、すでに食べ手の耳毒。ぜひ味わってみたいと、一人じりじり気をもむのです。
次ページでは、大西ハーブ農園のナスタチウムの葉と花を使った「ラ・ヴェロニカ」ディナーコースをご紹介します!