ヒロ・ソネの隣りで洗練されたエッセンスを吸収する。
カリフォルニアの「TERRA」「AME」でミシュランをはじめ数々の賞を獲得する、オーナーシェフ・ヒロ・ソネ。 |
ヒロ・ソネが来日したのは、「シルベラード」オープンの約1週間前。試作会から約2週間が経った頃でした。この時には「シルベラード」の工事も終わり、新しいキッチンも完成。でも、ここで吉田シェフのお料理を見て、ヒロ・ソネが最初に発した言葉は、「全部やり直し」の厳しいダメ出しでした。やはり海を挟んだレシピメールのやり取りだけでは、両者間のイメージにズレを生じさせていたようです。
そんなヒロ・ソネの言葉に、その日はまわりが心配するほどヘコんでいた吉田シェフでしたが、翌朝にはそれを立て直すがごとく、ヒロ・ソネの隣りにピッタリと張り付き、熱心に目を、耳をかたむける吉田シェフ。ヒロ・ソネがお料理に落とし込んでゆく洗練されたエッセンスを、すべて吸収しようとするひたむきな横顔が心に残ります。そして完成したのが、今日、最高とも言える「シルベラード」のカリフォルニア料理。
パンケーキとトルティーヤの対照的な食感を愉しむ。
この日いただてみたのは、8,000円のディナーコース。こちらは8,000円のランチコースとほぼ同内容。この他、ランチは3,500円、5,500円。ディナーはこの時、12,000円のコースも用意されていたのですが、現在は10,000円のコースのみになっています。
まず、前菜は通常のものに少しアレンジを加えた、「季節のクリエーション3種 セヴィーチェ、アスパラのグリル、十和田湖産サクラ鱒のスモーク」。これは、アボカドで和えたホタテにパリッとしたトルティーヤを添えたもの、アイオリソースで仕上げたアスパラのグリルにパルメザンチーズをあしらったもの、じゃが芋のやわらかいパンケーキにサワークリームで和えたサクラ鱒のスモークをのせたもの。
バルサミコ酢を入れたオリーブオイルが添えられるパン。 |
試作品でひと皿盛りで披露された「サクラ鱒のスモーク」は、今回は前菜として少量で登場。もっと食べたいと思うところで終わってしまう、まろやかな味わいは、パンケーキの優しさが醸し出すものなのか、サワークリームのさわやかな酸味からくるものなのか。全体がとてもしっくりまとまっているため、どれとは言えない感じです。
豚のスーゴはパンにつけて残さず召し上がれ!
「リガトーニパスタ、5時間煮込んだ豚のスーゴ、群馬県、高崎産舞茸とペコリーノチーズ添え」は、少し固めのパスタに、濃い目の味付けのスーゴがからみます。スーゴとは、日本で言うミートソースのようなもので、一度オーブンで焼いたスネ肉を、玉ねぎやセロリとともにコトコト煮込んだもの。パスタよりスーゴの量が多いので、残りはぜひパンにつけていただきたいひと品。
最も気に入った魚料理は、甘辛いグリーンカレー風味。
メインのお魚は、「銀鱈の炙り焼き、有機野菜のポトフーグリーンカレー風味と伴に」。実は今回のディナーコースで、一番気に入ったのが、最後に出てくるデザートのショートケーキと、この銀鱈の炙り焼き。
運ばれてきたとたん感じる甘い匂いの正体は、グリーンカレーにはなくてはならない、あの白いココナッツミルク。でも、本当に甘いのは、口に入れた瞬間だけ。喉元を通る時は、カッとした辛味に変わります。
そんなスープの中に浮かんでいるのは、全体を軽く焼いた銀鱈。つるつるとした表面に脂がのっているのが見た目にもよくわかりますが、口に入れると、それは尚のこと。じゅわっと広がる旨みの中に、下味の醤油が見え隠れし、おいしさに弾みをつけます。
3つのソースで変化をつける「仔羊の香草焼き」。
メインのお肉は、「仔羊の香草焼き、初夏野菜のラタトゥイユ、フンムス、タブーリ、ライタ添え」。塩、胡椒、スパイスが基本の仔羊は、どこのお店で食べても似たような味わいになりがちですが、そこをここでは3つのソースで変化つけます。
それは、ひよこ豆をペーストにしたちょっと酸っぱい「フンムス」、小麦の皮をむいて蒸したものをカレーオイルで引きしめた「タブーリ」、キュウリとミントをヨーグルトで和えた「ライタ」。
「タブーリ」の軽い刺激と「ライタ」のさっぱり感は、仔羊ともよく合いましたが、正直「フンムス」はちょっと苦手。好きな人には、仔羊をおいしくする要素のひとつになるとは思いますが、私には独特のクセのある酸味が、ちょっと前に出過ぎる感があります。でも、これが添えられている「パパダム」と一緒に食べると、急においしくなるから不思議。「パパダム」はレンズ豆を揚げた薄いパン。よく効いた塩味が、フンムスの酸味を緩和してくれるようです。
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