WiiとPS3の、それぞれの「課題」 |
ゲーム機に限ったことではありませんが、新開発した商品を宣伝するときは、しかもライバル社の新商品も同時期に発売される場合は、自社の商品「だけの」魅力をアピールすることは重要です。だからこそ、Wiiは「誰もが遊べる」ことをアピールし、PS3は「高性能」をアピールすることに重点を置いていました。そして、その結果としてPS3の売り上げはWiiの3分の1という大差をつけられてしまっているわけです。
『みんなのゴルフ5』の公式サイト。テレビCMの配信なども充実。 |
この現状を打破したいSCEは、自社の看板タイトル『みんなのゴルフ5』の発売を機に、PS2時代のようなプロモーションへと回帰する動きを見せています。コマーシャルはゲーム画面中心の構成ではなく、「コマーシャルそのものの面白さ」もしっかりとカバー。『みんなのゴルフ5』とPS3本体がセットになったお買い得パックも販売し、さらに今年度中に合計200タイトル以上のソフトを用意する予定とのこと。「ソフトの低価格化・多様化」という、PS2時代(むしろPS1時代)への原点回帰を図りつつあります。PS3ならではの魅力を「用意」し、それを消費者にきちんと「伝える」ことができれば、PS3がこれから勢いを増してくる可能性は大いにありそうです。
そして、順調に売り上げを伸ばしている任天堂にも、油断してはいられない事情があります。『脳トレ』などのツール系ゲームが流行する一方で、従来型ゲームの売り上げが減少している……と最初のページでも書きましたが、じつはツール系ゲームの売り上げも、かつてほどの勢いを落としつつあるのです。むしろニンテンドーDSの『脳トレ』と『えいご漬け』は例外的な大ヒットであって、最近発売された『大人の顔DSトレーニング』や『がんばる私の家計ダイアリー』などは期待していたほどのヒットにはならなかった……という小売店や流通関係者の声も、少なからず耳にします。
Wiiは「PS3より安い」「シンプルかつ斬新な操作性」でゲーム初心者からも支持されている反面、グラフィックの綺麗さなどの性能面ではPS3に一歩譲るため、つねに新しい遊びを提示していかないとユーザーに飽きられてしまう、というリスクも抱えています。「Wiiバランスボード」や「Zapper」などの拡張コントローラを続々と用意しているあたり、任天堂もこのリスクをしっかりと自覚していることが伺えますね。
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また、その一方で『Newスーパーマリオブラザーズ』や『ゼルダの伝説 夢幻の砂時計』など、いわゆる従来型ゲームのヒット作も増えてきています。田下さんも記事で書いておられたとおり、従来型ゲームでも「分かりやすいゲーム内容と、分かりやすいプロモーション」を両立できていれば、ツール系ゲーム以上にヒットする可能性は十分にあるのです。(このことは、従来型ゲームが主流のPS3にもそのまま言えることですね)
現時点では、任天堂がプロモーションの成功によって優位を保っています。これからも任天堂が勢いを維持できるか否か、SCEがPS3の本領を発揮できるか否かは、ふたつの「分かりやすさ」を両立できるか否かにかかっているようです。ソフトが出揃ってくる今年の年末商戦あたりには、この2社の状況は大きく変わっているかもしれませんよ!