怖い?怖くない?
他の登場人物は意図的に目が隠されている。反対に主人公のみは目の描写が多い。映画では許されないこの描写が、怖い。 |
従来作と違って、映像が極端に鮮明だから直接的なホラー表現を避けたのかもしれない。その分、背筋がムズムズするような不安感はよく表現できていると感じた。
実際、横でプレイを観ていた家内は充分に怖さを堪能できたようで、その夜はろくな夢を見なかったらしい。
残虐描写の多い欧米のスプラッタではなく、邦画ホラー独特の、雰囲気で恐怖を感じさせるタイプである。
その点このゲームでは(感情移入のためだろうが)登場人物の顔ははっきり表示されず、画面は総じて暗い。全編から感じられる、むせ返るほどの陰気臭さは非常に好感が持てる。もちろん褒め言葉である。
さて、サウンドノベルの従来作と同様、『忌火起草』の物語は一つではない。一度物語を読み終えることで他の物語を楽しむことができる。
具体的には一度クリアするとそれまでにはなかった選択肢が追加され、それらを選ぶことによって違う展開へと進んでいくのである。
繰り返しプレイすることによって新たな物語が出現すると言うのが、映画とは違う本作ならではの醍醐味と言える。
新たな物語に進むためにいろいろな選択肢を試すという段階では本作の「フローチャート」という機能を駆使することになる。物語の分岐を目で見ながら選択肢を切り替え、次の選択しまでは↓ボタンで読み飛ばすという作業が必要になってくる。
爪が黒くなっていく…。スプラッタな描写ではなく、こういう手法で不安感を募らせている。 |
ゲームとしての本質に影響はないが、それでも少し寂しいかも知れない。
これとまったく相反することではあるが、本作はPSPによるリモートプレイも実現している。
これはPSPとPS3を無線LAN接続することで、PSPの画面で『忌火起草』を遊ぶことができるという機能だ。
画面は小さくなり、当然音声もステレオだが、しかし「ちょっと読み進めてから寝ようかな」などと言った時に非常に嬉しい。お風呂場でだってトイレだって恐怖体験が待っているのである。ロケーション的にはコチラのほうが怖いかもしれない。
PS3のバージョンアップにより、PSPのリモートプレイからPS3の電源を入れることも可能になった。その気になれば外出先の無線LANからPS3を起動し、『忌火起草』を楽しんでから電源を落とす事だって可能なのである。
この便利な機能も、現時点ではオンラインサービスの『トロステーション』と『忌火起草』しか対応していないのが残念だ。また、インターネット越しの接続ではなかなかうまくいかないこともあるようだ。筆者の環境では職場と自宅のリモートプレイがタイムアウトになり出来なかった。
本作はPS3の能力を活かし、音声面でも映像面でもかなり進化したサウンドノベルだ。特に音声のリアルさはぜひ確認して欲しい。
プレイ中、不意に鳴る着信音のリアルさが実は一番怖かった。
HD画像、5.1chなどの技術より、何故か懐かしさも感じる着信音にアナログな恐怖を感じるというのも不思議な話である。
忌火起草
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