■『マトリックス』の元祖?
映画『マトリックス』をご存知の方は多いことでしょう。人々すべてがバーチャル空間で生活する中での、真実を知った者達の戦いを描いた映画です。
この映画の中では日常生活はすべてが機械が作り出したバーチャル空間で、生身の自分自身はエネルギー源として囚われています。
特筆すべきはバーチャル空間の描き方です。そこの住人にとっての現実であるそのバーチャル空間で、主人公達と彼らを捕らえるために機械が生み出したエージェントたちだけが超人的な活躍をします。
監督のウォシャウスキー兄弟は「アニメの手法で実写を撮った」と言われ、ワイヤーアクション、CG、またはその特異な世界観など、いたるところで日本製アニメの影響を見ることが出来ます。
この『マトリックス』が参考にしたといわれる作品が、今回紹介する『攻殻機動隊』です。
■映画の描くネットワーク
極度に発達した機械文明が人類に復讐する、といった趣旨の物語は『ターミネーター』シリーズでも描かれて話題になりました。
特に最新作『ターミネーター3』ではネットワーク上の人工知能が人類に牙を向く瞬間が物語のクライマックスを彩ります。
実は『ターミネーター』『ターミネーター2』を監督したジェームズ・キャメロン氏も『攻殻機動隊』に関わったアニメーター数人を引き抜こうとしたことがあったそうです。
他にも仮想現実を描いた物語として、映画『イグジステンズ』、『バニラスカイ』などがあります。
個人的に敬愛する作家岡嶋二人による小説『クラインの壷』は、おそらく現実とゲームの境界線がわからなくなるという現在ではありがちなストーリーの祖なのではないかと思います。
他、サンドラ・ブロックが主演した『インターネット(洋題:ザ・ネット)』はネットワーク社会に警鐘を鳴らす内容として面白いですし、ハリソン・フォード主演のサイバーパンクの教科書とも言える『ブレードランナー(原作:アンドロイドは電気羊の夢を見るか)』は近未来をリアルに描いた傑作でした。
■やがて来るネットワーク社会
例えば手塚治虫先生の『鉄腕アトム』が未来のロボット社会を予言したように、『攻殻機動隊』はネットワーク社会を予言した作品と呼べると思います。
この世界では「電脳化」という、脳にマイクロマシンを注入して思考を直接外部のインターフェイスとやり取りできるようになる技術が一般化しています。
『攻殻機動隊』のメンバー達は生身のまま、携帯電話のように電脳化された人々と会話することが出来ます。
また電脳化した人々の首の後ろにはコネクタ的な端子がついており、ここにケーブルを接続するとネットワークに接続することが出来ます。
これは「人々の生活の裏にネットワークが根付いている」という現在の状況を予言したと言えるでしょう。だからこそ『攻殻機動隊』の描く未来像はリアルで生々しいのです。
次のページでは『攻殻機動隊』の紹介、3ページ目で軽くゲーム版『攻殻機動隊』を紹介しましょう。