隅田川でウナギを釣っているおじさんに遭遇
撮影のためにうなぎと格闘してくれたおじさん。「痛っ!」とうなぎに噛み付かれつつ、魚篭から外に出してくれた。感謝! |
ああ、ここか。新しい道が土手の上に続いている。そこを歩いて行くと、とつぜん視界が広がる。隅田川だ。薄暮の中、川から吹いてくる風が心地よい。川辺には遊歩道があって、2人の若い女の子が小さな犬を散歩させているのが見えた。
僕たちも土手から遊歩道に降りて歩くことにした。隅田川の上流方向の空が赤く染まっている。さほど、長い遊歩道ではない。しばらく歩くと終点。そこに、釣をしているおじさんがいた。Nくんが
「何が釣れるんですか」
と声をかける。おじさんは、
「うなぎが釣れるんだ」
と教えてくれた。
川に浸している魚篭を引き上げて、見せてくれるおじさん。Nくんが写真を撮ろうとしているが、うまく撮れない様子だ。するとおじさんは、魚篭の中のウナギを遊歩道に出してくれた。2匹の黒い影がさかんに動く。ニュルニュルと遊歩道の上でのたうちまわる。僕はウナギが川に逃げてしまうのではないかとハラハラした。
僕らは遊歩道から住宅街に進む。Nくんはまだ興奮ぎみに
「すっごいですねぇ、あのおじさん、何者ですかね」
と言っている。釣り人じゃないの……。僕もよくわからない。そう返答すると、Nくんはもうそんな話はすっかり忘れて
「お腹、減ったなぁ」
と言う。そうだ、たしかにお腹が減った。僕たちは、暗い住宅街を歩いた。どこかに夕ごはんをとる店がないか探しながら……。