階段を下りれば、そこは懐かしさ込みあげる空間

『目黒シネマ』の館内は地下にある。階段を下りれば、懐かしさがこみ上げてくる
映画のタイトルは「ラベンダーの咲く庭で」というものだった。タイトルだけだったら見なかったろうなぁ。そう思いながら、ロビーで上映時間を待つ。ここ「目黒シネマ」では、映画の上映中は中に入れないようになっている。その間に売店で売っていた「横濱馬車道あいすもなか」を買って食べる。

うまい。とても懐かしい味がする。それにしてもロビーなどもきれいである。理由はすぐにわかった。全館禁煙なのだ。昔も場内は禁煙だったが、ロビーなどの煙草の吸える場所は、モウモウと煙が立ち込めていて、映画館というと黒ずんだ床にヤニ臭さというものがあったけれど、最近は快適なんだ。

椅子なども昔に比べると本当によくなっている。平日の昼間だけれど、けっこうお客さんは入っている。といっても、満員ではなく、ちょうどいい感じだ。

映画が始まった。海岸の傍に建つ古い家。そこには老姉妹が住んでいる。そこへ、青年が漂着。あ、これは少し前にニュースで話題になった「ピアノマン事件」に関連する映画だ。イギリスの海岸に記憶喪失の青年が漂着し、ピアノを弾かせたらすごくうまかったという事件をおぼえていらっしゃる方は多いだろう。あの事件はこの映画のプロモーションでヤラセではなかったかと話題になったやつだ。

おお、いい映画に当たったなぁ。話のタネにはなるぞ、と観始めたのだが、これが実にいい映画で、泣けてきた……。泣けるんだけど、爽やか、みたいなかんじ。これこそが、名画座である。つまり封切館やロードショウ館でみる映画は、新しい映画だけれど、ハズレもあるわけだ。

ポップコーンではなく、プリッツなどが並ぶ売店。昔ながらのスタイルを貫く
ところが、名画座は支配人のチェックを経たいい映画だけが上映されているわけで、名画座の楽しみというのは、その支配人の映画を選ぶセンスと自分の嗜好が合うかどうかということであろう。名画座というのは映画館そのもののファンになることなのかもしれない。たとえて言うなら、すし屋の「おまかせ」であろう。タイトルや主演の俳優、映画監督が嫌いだったとしても、この名画座を信じて、とりあえず観てみる姿勢が大切ではなかろうか。

というわけで、映画を見た後で、「目黒シネマ」の支配人である宮久保伸夫氏に話をうかがった。