散歩/和む散歩ルート

高田馬場~神楽坂 偶然が重なる奇妙な散歩(3ページ目)

高田馬場から神田川沿いを歩き、江戸川橋。神楽坂の地蔵通り商店街を抜けて、毘沙門天まで歩く。人と人との綾が織りなす人生模様に感嘆しつつ、われらが散歩はまだまだ続く。

増田 剛己

執筆者:増田 剛己

散歩ガイド

胸突坂を駆け上がってみる

神田川のほとりを歩く。1週間たってもまだ大雪のなごりが
早稲田通りを右に折れると川に出くわす。これが神田川である。高田馬場界隈を散歩するにはこの道がいい。歩く人も少なく、道幅もそこそこある。ウォーキングやランニングをしている人を見かけることもある。

実は先日、この道の先におもしろい坂を見つけたのだが、今回はその坂を登ろうという趣向。神田川から目白通りに上がる坂は平行していくつもあるのだが、先日見つけたのは「胸突坂」というもの。坂好きのNくんにも喜んでもらおうと思ったのだが、

「ああ、そこは僕も知ってますよ。でも胸突坂っていうのは他にもあって、僕はそっちのほうが好きですね」

と言う。がっかり。そうなのだ、「胸突坂」というのは、急な坂にはよくつけられているそうだ。が、ここで新事実発覚。いやぁ、「事実は小説より奇なり」である。

遠藤さんと胸突坂。感慨深けに坂を眺める
今回、一緒に歩いてくれている遠藤さんが、

「あれ、それ僕が作家をやっている番組で取り上げたことありますよ。でも、この辺じゃなかったなぁ。たしか文京区だったと…」

いま、僕たちが歩いているのは新宿区なのだが、このあたりは豊島区、文京区、新宿区のちょうど境目。たしか胸突坂は文京区関口だったはず。

神田川沿いを進むにつれ、

「あ、そうだ。やっぱり、去年ここに撮影にきましたよ」

と遠藤さん。彼はテレビ朝日で放送中の番組、「全力坂」の構成作家なのだ。今回歩くコースは遠藤さんには伝えておらず、これはまったくの偶然。

そんなことを話しているうちに「胸突坂」の下までやってきた。

「そうそう、ここですよ。去年の夏、暑い時期に来ましたよ」

Nくんがそれを聞いて

「それは大変だったでしょう」

と心にもないことを言っている。

「全力坂」という番組は、女性アイドルやタレントさんが全力で坂を駆け上がるというシンプルな深夜番組。そこにいろいろな商品情報が出てくるというものらしい。僕もチラッと見たことがある。

「そうですねぇ、大変でしたよ。しかし、ここって高田馬場からこうして歩けるんですねぇ」としきりに感心している。神田川沿いを歩いているからわからないが、ここはもう早稲田から江戸川橋あたりだ。

「あ、そういえば、僕らが撮影したときは地下鉄の江戸川橋駅からきましたねぇ」と言う。

僕たちもこの坂を駆け上がってみる。さすがに急勾配だ。今はコンクリートの階段になっているが、昔はさぞかし大変だったろうなぁ。とくに雨でぬかるんだりするとなかなか登れなかったのではないだろうか。
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