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『完本 1976年のアントニオ猪木』を語れ(3ページ目)

日本プロレス界の行く先を決定付けた運命の1年=アントニオ猪木の1976年を描いた柳澤健著『1976年のアントニオ猪木』が完本となって発売された。語りつくせぬ、その魅力を柳澤さんに聞いてみた――。

執筆者:川頭 広卓

猪木へのインタビュー“今だから言えるけど…”

――そういえば、<本書P.292より>東亜日報の記事などは、よく見つけられましたね。

「韓国でもパキスタンでも、世界中の新聞はちゃんと書くのよ。“プロレスっていうのはショーだ”って。ちゃんと書かない日本の新聞がおかしいんです」

――さて、今回の『完本 1976年のアントニオ猪木』では、単行本に比べてどのあたりが追加されているのか、改めて教えて頂けますでしょうか。

「(単行本では)韓国編の分量が凄い少なかった。一般読者には興味が薄いと、担当編集者が削除したからです。前にも言いましたけど、ルスカっていうのは一人の悲しい男の物語。アリっていうのはスーパースターの物語。パク・ソンナンは国家の物語。で、パキスタンのアクラム・ペールワンのところは一族の物語になっている。意図したことではないんだけど。

文庫版で韓国プロレスの歴史をしっかり追加したかったのは、そこを書いておかないと、猪木さんがぶっ壊したものの大きさが見えてこないから。

一言で言うと、“これだけでかいものがあったのに、猪木さんは酷いことしたね”っていう話じゃない(笑)。パク・ソンナンと猪木さんの試合は、一国のプロレスに影響を与えてしまうだけの凄い意味を持つ試合だったんだけど、その大きさっていうのが、単行本では見えにくかった。そのことがずっと心残りだったから、今回追加できてホッとしています。

(単行本では)その国家の物語に、パク・ソンナンも猪木も出てこない部分が長くなりすぎて削られた。当時はまだまだ私も下手だったということがあり、不要なディテールを削る事ができなかったんですね。

パキスタン編で言えば、グレートガマのところでは、どうしてアクラム・ペールワンの一族がプロレスを始めなきゃいけなかったのかっていうところをサラッと書きすぎた。ガマという人がどういう人か追加できたのもよかったですね」

――他にも、“完本――”で追加された部分というのは?

「あと、写真を入れられたことはよかったかな。東スポに担当編集者と一緒に探しに行ったんです。向こうに予めメールしておいて、“こういう写真を探している”って伝えて、出してもらった」

――やはり、パク・ソンナン戦の一試合目の写真はなかったですか?

「ないね~」

――<本書P.377より>猪木がアクラム・ペールワンの目に指を入れている場面は、決定的瞬間でしたね。

「テレビカメラが何台あっても撮れないだろうって書いたけど、カメラが撮ってるじゃん(笑)」

――あとは、アントニオ猪木へのインタビューですよね。

「今だから言いますけど、 “自分の世界観が、猪木さんにことごとく否定されて終わってしまったらどうしよう”っていう恐怖感はありましたよ。

自分でも気づかないところに、大きな論理的欠陥があって、ここが壊れてしまったら、全部壊れちゃうっていうところをグサッと言われてしまい、ものの見事に私の本の存在理由がなくなってしまう、という可能性もあった訳でしょ? 向こうは当事者で、私は所詮他人ですから」
後編へ続く

Special Thanks:Kenichi Ito

『完本 1976年のアントニオ猪木』

<文春文庫>
著者:柳澤 健
価格:800円(税込み)
文庫: 493ページ
出版社:文藝春秋 (2009/3/10)
ISBN-10:4167753650
ISBN-13:978-4167753658
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