「これ、私の技なんだけど…」悲しく呟く
プロレス界に革命を起こした、里村の雪崩式腕十字 |
その技は、雪崩式の腕十字です。
この“関節技を雪崩式で仕掛ける”という発想は、今でこそ関節技を得意とする選手に良く見られるようになりましたが、当時は男子プロレスも含めて、関節技をコーナーから雪崩式で仕掛ける選手はいませんでした。
里村選手はデビュー一年目でこの技を使っていたのですが、後からどんどん同系統の技をやる選手が増えていきました。
しかも、使う選手は当然ですがほとんどが里村選手よりキャリアが上です。だから他団体の試合中継を見ていて、選手が雪崩式腕十字を使い「これはすごい技ですね。すごい技を出してきました」と、解説者が絶賛した時「これ、私の技なんだけど…」と悲しく呟いているのを聞いたことがあります。
第一号でオリジナルだったのに、あまりに早熟だったため、キャリアの壁に想うところがあったのではないでしょうか。
しかし、里村選手は、次々と“ならでは”のオリジナル技を開発していきました。腕に四の字固めをかける腕四の字とか、相手の膝に乗り両肘を相手の頭に突き刺す天中殺とかがそれです。
これらも道場で練習し、満を持してリング上で披露しましたが、お気に召さなかったのか、その後封印して、今ではお蔵入りとなった技でもあります。
他にも、オリジナル技を開発しても、上手くいかなかったり、思ったより周りの反応がよくなかったり、お披露目する前の道場の練習段階で「その技は…、どうだろうか…」という空気が選手間に漂った場合など、里村選手は潔く封印していました。
その潔さがまた、次の技の発想へと繋がるんだと思いました。
また、化粧回しで入場する等、試合の中に相撲を取り入れていたシュガー佐藤選手は、倒れている相手ににじり寄り、相手の腹を踏み潰す“雲龍”という技を使っていました。
これはもろに相撲の“しこ踏み”です。ありそうでなかった技です。
技に行く前、力士が土俵入りでやるようにポーズをつけてから技に入るのですが、観客は「ポーズはいいから、早く潰せよ~」と、やきもきすることもしばしば。が、そこは佐藤選手の遊び心で、そんな観客の想いをよそに、たっぷり溜めてポーズをとっていましたね。
フットスタンプを持ち技にしていた永島選手は、さらに破壊力をつけるため、コーナートップから一回転してフットスタンプをする技を編み出しました。その名も“一回転フットスタンプ”。そのままです。
フットスタンプは既存の技ですが、コーナーから一回転するのは永島選手のオリジナルで、私が知る限り他に使っている選手を見たことがありません。
永島(千佳世)選手も道場で厚さ30cmあるエバーマットをコーナー下におき、目標の位置にタオルやダミー人形をおいて、腕をどれだけ振りかぶれば回転がスムーズにいくかや、ジャンプする角度や足の縮め方、また相手をどの位置に置くかなど、気が遠くなるほど練習していました。
ちなみにこの当時、選手の技の練習で大活躍していたダミー人形は、私がコスプレ作りの最中に作った物です。
一部の選手からは、“まさお”と呼ばれていたとかいないとか。