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さくらコラム第9回:プロレスラーの受け身(2ページ目)

大好評さくらコラム第9回は『受け身』!プロレスにとっては基礎でありながら、最重要の技術と言える。しかし、広田は現役時代、既に独自の受け身を開発していたという・・・。その秘密とは?

執筆者:川頭 広卓

顔面受け身は“前受け身”の応用!?

高田純次:高田純次のロボットダンスの動きで相手の周りを回ってから倒れこむヘッドバット。気をつけの姿勢のまま倒れこみ、かわされたら顔面受け身を使う。
さて、今回の本題です。

私は試合中、道場では習っていない受け身、その名も『顔面受け身』という独自の技術を使っていました。果たしてこの顔面受け身とは何なのか?
これから紐解いていきます。

顔面受け身は“前受け身”の応用です。
前受け身は文字通り、前に倒れる際に取る受け身で、私も練習生の時にさんざん苦労しました。
後ろ受け身に比べ、なまじ目で見えるので最初は本能的に怖がってしまい、ひざから落ちたり、先に手をついて前のめりになってしまうのです。
具体的にこの受け身を使うシチュエーションは、デビル雅美選手の“ずんまえ(パワーボムのように抱えあげ、そのまま後ろに放り投げる技)”を受ける時や、ボディプレスやムーンサルトをよけられて自爆した時などです。

一番使うのは、ドロップキックの着地の時ですね。
前受け身が低い=キックの打点が低いことにもなるので、この時は飛び上がる高さも要求されます。前受け身は受け身の中でも、難易度が高い受け身なのです。

そして顔面受け身の話です。
顔面受け身とは、書いて字のごとく、“顔からイク”受け身です。
これは私が編み出した受け身で、本来、足・体・手のバランスで前受け身を取るところを、手を一切使わず、ノーガードで顔から倒れて顔で受け身を取ります。

具体的には相手につまづかされた時や、ロープに走ってセコンドに足をすくわれた時に使います。
この時、単に普通に前受け身を取るか、顔面受け身を使うかで、お客さんの沸きは大きく違います。
顔を打った事による笑いと同時に伝わる「うわ、顔からいったよ…」というリアルさ…。
それはまさに痛みの伝わるプロレス…天龍イズムです。
私は技を仕掛ける時にも結構使っていました。

例えば、チームエキセントリックの合体技『素晴らしい連携』です。
この技はテコの原理を応用したボディプレスの一種ですが(1ページ目写真参照)、失敗した場合はもちろんの事、技の特性上、成功した場合も仕掛けたはずの私の顔はいつもリングにメリこんでいました。

また、倒れこみ式のヘッドバット『高田純次』(写真参照)の時も使っていました。

この受け身、後輩には伝授しませんでしたが(してたら長与さんに怒られる)、今だと全日本プロレスの荒谷選手などが使用しています。
荒谷選手はTAKA選手に足を引っ掛けられて顔からイッてました。
見た目、単に“手が出る前に転んじゃった”ようにも見えましたが、その受け身が私が名付けた“顔面受け身”であることは、荒谷選手は知る由もないでしょう。
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