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ゆでたまご嶋田先生が語るキン肉マン1(3ページ目)

ゆでたまご・嶋田隆司先生に語ってもらった90分には、成功へのキーワードがいくつも散りばめられていた。キン肉マン誕生から27年。“あの頃の少年達”へ贈る特別インタビュー。

執筆者:川頭 広卓

破綻を恐れないストーリー展開

ガイド:キン肉マンの移り変わりと共に、主人公キン肉マンはこれまでの典型的なヒーロー像とは違うタイプのヒーローとなりました。

嶋田先生:ジャンプではよく「友情」「勝利」「努力」っていってますけど(『週刊少年ジャンプ』の3原則)、努力っていうのは、僕らの時代にはもう流行らないものだったので、“なんとなく勝っていくドジな主人公”という感じで描いてました。

ガイド:キン肉マンの人格を形成していく上で意識したことは?

嶋田先生:あんまり努力しない(笑)

ガイド:あ、でもキン肉マンがプリンス・カメハメ師匠の下で相当努力してましたよ(笑)

嶋田先生:後には努力するようになりましたけどね。それよりも、キン肉マンって、友達がいっぱいいるじゃないですか?本人は意識していないけど、なんとなく友達はいっぱいいる。当時のファンレターにもあったんですよね。「キン肉マン、友達がいっぱいいていいですね」って。

ガイド:そういう感じ方をする読者もいるんですね。

嶋田先生:そこまで意識して描いてはいなかったんですよ。ただ、小学校の時の友達でいるじゃないですか。人の家に勝手に入ってきて、普通に冷蔵庫とかを開ける奴。でも、周りからは慕われている。そんな風にしたかったんですね。

ガイド:憎めないキャラクターで人望が厚い……。後にキン肉マンの代名詞となる「友情」へと繋がる部分ですね?

嶋田先生:それが、僕らが連載始めて2年くらいした時に、少年サンデーでラブコメ路線が始まったんですよ。そうすると、ジャンプの読者投票で「好きな言葉を3つ書け」という設問でも、「友情」「勝利」に加えて「愛」っていうのが出てきたんですよね。だから一時サンデーに抜かれかけた時があって、凄く危なかった時もありました。でも、僕はラブコメとかあまり好きじゃなくて。

ガイド:結果的に、キン肉マンは「友情」「勝利」「努力」を象徴する作品となった?

嶋田先生:僕らの時はそれを意識した訳ではないし、編集者の方からいわれたこともなくて、3~4年後に(ジャンプ3原則を)聞いた時、たまたまそれが(キン肉マンに)入っていたというだけなんですよね。当時は『キャプテン翼』の高橋陽一君も、『北斗の拳』の原(哲夫)君も聞かされてなかったんじゃないかな?その後、マニュアルみたいにいわれるようになりましたけどね。

ガイド:また、先生は、一つの作品の中でも、超人や技、名場面まで、もの凄い数のブームを何度も起こしてきました。そのアイデアはどこから生まれたものですか?

「破綻を恐れない」という言葉に、今にはない作風を強く感じた
嶋田先生:やっぱり行き当たりバッタリですね。先の展開まで緻密に考えない。大先輩の本宮ひろ志先生(『サラリーマン金太郎』作者)の作品を読んだりしても、ハッタリが効いているんですよ。男一匹ガキ大将の万吉が何百・何千の敵に囲まれて、「さあ次はどうするか?」っていう場面で引いて、次回はアッというアイディアで切り抜ける。僕なんかもラストでハッタリをかまして、まあ「来週の自分が何とか続きを考えてくれるだろう」って感じで創っているんです。

ガイド:確かに、近年は緻密に計算されていたり、推理、謎掛けの多い漫画も増えています。

嶋田先生:自分達も先が読めないのに、読者が先を読める訳がないという……。今の作品は読めてしまうんですよ。(作者が)破綻を怖がりますからね。ネットで書き込みとかもされるでしょうし。でも、僕らは、書き込みとか読みませんから。

ガイド:では、先生が具体的に意識されているところというのは?

嶋田先生:とにかく漫画のラストのひとコマの“引き”を大事にしているんですよ。「なんだ?」「これは?」で、(その号の連載を)切ってしまうところを、僕らはその答えまで見せてしまうんです。そうすると、次はまた新たなものを作らなければならないので、一切出し惜しみがないんです。

ガイド:確かにその通りですね。

嶋田先生:その代わり、しんどいですよ~。

次回に続く
注1:1979年8月26日、日本武道館で開催された、東京スポーツ社主催のプロレス興行「夢のオールスター戦」。メインイベントは馬場、猪木vsブッチャー、シン。

注2:1977年に全日本プロレスが開催した「世界オープンタッグ選手権」。決勝戦となったザ・ファンクスVSブッチャー・シーク組の一戦はファンの間で伝説となった。


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