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K-1,PRIDEの引き抜きは許さない!「ボクシング界からの絶縁状」(下)(3ページ目)

ついにボクシング界がPRIDE、K-1からの選手引き抜きに対して、強硬な対抗措置を打ち出した。この流れはボクシングと新興格闘イベントとの「絶縁状」になってしまうのか。

執筆者:井田 英登

K-1はなぜボクサー消費で“成り上がろう”とするのか

今更嘆いても仕方のない事だが、石井プロデューサーとドン・キングらアメリカボクシング界との交流は順調に進まず、結局猪木軍とのプロレス的な対抗戦にすり替えられて行ってしまった。これによって、K-1の“青春”は終わったと言ってもいいだろう。

その後のK-1がボクシングに注ぐ視線は、ロングアイランドの対岸の灯を眺めるジェイ・ギャッツビーの瞳のように、あるいは、熱海の海岸散歩する「金色夜叉」の貫一の心情のように(判んないね(笑))、ボクシング/アメリカンメジャースポーツへの届かなかった“想い”を、その後の経済的成功で償却しようという、そんな奇妙な情熱に憑かれているように感じられてならない。まあそんな戯れ言はさておき、この時期を契機にしてK-1の競技的な展開は(PRIDEの躍進にも引きずられて)奇妙に偏向して行く。

その後、谷川プロデューサーにバトンタッチされた後のK-1が、いわゆる“モンスター路線”で低迷する中、2003年秋ごろ元IBF・Jウェルター級級王者ビンス・フィリップスの参戦やマイク・タイソンとしのぎを削ったフランソワ・ボタの参戦など、「第三次接近遭遇」の時代が巡ってくる。この動きに一縷の光明を見いだして、僕もAll Aboutでも盛んに、ボクシング対抗戦路線を称揚する記事を書いた記憶がある。

いま思えば、僕も「第二期接近遭遇」時の熱気を知らず知らずの内に希求していたのかもしれない。正直、プロレスの亜流のような「モンスター路線」を押し進めていた当時のK-1に辟易していたのである。当時の僕の論調は、カンフル剤でしかない危急の策を大仰に支持しているようで少し滑稽かもしれない。自分で言うのも何だが、多分、一種の“酸欠状態”に陥っていたのだろう。往年のボクサーを引き抜くという場当たりな方法では、決して「ボクシング界との交流」と呼べないことは、十分わかっていたはずなのだが。

そもそも、今回のMaxにボクサー参戦という話が勃発したのは、往年の名ボクサーシュガー・レイ・レナードがK-1に選手派遣を言い出したからだというが、果たしてそれ以外のボクシング筋のルートを確保できているのか? あるいはWBA、WBC、IBF、WBOといったメジャー筋にどれだけのネゴシエーションを実施したのだろうか。正直なところ、今回の発表を見る限り、その気配は薄い。ただ仕事にあぶれたフィリップスを釣り上げることに成功しただけのようにしか見えず、この先につながる展開はあまり見えない。そのあたりの先行き不透明感がある限り、このボクシング対抗戦路線にはまだまだ暗雲が立ち込めていると言わねばなるまい。


と書いたのは、前掲のフィリップス参戦の記事での事。だが、ここでも書いている通り、正面からボクシング組織とのビジネス提携を模索していれば、K-1も“引き抜き”云々のつまらない汚名を冠ることもなかったのではないかと思う。

繰り返すようだが、選手を一本釣りするだけの行為には、何の意味もない。“ファンの夢を叶えるため”というお題目は、単に責任の所在を拡散させるためのお題目にすぎない。

悲しいかな、K-1のイベント性、TVコンテンツとしての訴求力を維持する事に汲々とする現K-1執行部に、きちんとした「正面交流」の意志は見られない。結局K-1とボクシングと間には、「両想いの恋」や「幸福な結婚」と呼びうる良好な関係は、永遠に巡って来ないのかもしれない。
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