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K-1プロデューサー交代劇から一年を総括 「谷川K-1を巡る内憂外患(下)」(3ページ目)

谷川貞治氏がFEGを創設、K-1プロデューサーを正式に引き継いで一年が過ぎた。批判の声は高く、状況は好転を見せない。谷川K-1の危機状況を徹底分析。( 後編)

執筆者:井田 英登

さらに今後の谷川体制に対する提言として、“原点回帰”のためのテーマを列記してみよう。


ボンヤスキー
往年の名選手アンドレ・マナート氏の薫陶と、エリート銀行員として培った知性。21世紀のK-1を復興させる鍵は彼が握っている。
1、 若き王者の君臨:ホースト的K1をぶち壊せ
先にも書いたが、王者ボンヤスキーの成長こそがK-1本戦の命運を握っている。彼がMAXの魔裟斗のように、シーンの牽引車となってくれない限り、K-1の復活はないと断言してしまっていいだろう。

今年のGPには幸いな事に、そのボンヤスキーにとって“踏み台”にうってつけのアーツとホーストが居てくれる。この第一世代の二人のオランダ人を突破できるかどうか。

肘膝をルールで封じられたホーストにとって、今武器となるのはローで稼ぐポイントぐらいのもの。得意のハイはパワーファイターにはなかなか通じないこともあって、ほとんどカンガルーパンチとプッシングで距離を稼いで、ワンツーローのコンビでポイントを取り、判定で勝つ戦略に徹しているホースト。こんな試合が面白いわけがない。ホーストはもっと面白い試合が出来る選手なのだ。ただルールが彼を良くも悪くもスポイルしている。逆にK-1に過剰適合してしまったホーストだからこそ、これだけ勝ち続けられるわけでもある。そのホースト的K-1をぶち壊せるかどうかが、若き王者の存在に説得力を増す唯一の道なのである。

2、 アーツの逆襲:立ちふさがるオヤジ
第一世代代表のアーツが勝つこと。勝って若い世代の壁になること。これは大きなテーマとなりうる。近年腰の故障で弱弱しい姿を晒していたアーツだが、ようやくその故障とも“仲良くする”術を覚えたようだ。今のアーツにはかつてのがむしゃらさこそないものの、どっしりした存在感が戻ってきてはいる。選手としての仕上げに入った選手の強さを感じさせる。このアーツに復権があれば、ボンヤスキーには試練が与えられる。
F-1のたとえでいえば、今彼はプロストやマンセルという先達と強烈な凌ぎあいを潜り抜けた末に偉大な王者となったセナのような神話を築けるか、それともそのセナと直接戦うことなく孤高の王者となってしまったシューマッハになってしまうかの端境にあるのだ。

3、イグナショフ復権でライバルストーリーを
昨年の今頃、ボンヤスキーに与えられていた期待はむしろイグナショフのものだった。だが天才肌ゆえの自己過信と、余分な総合マッチへの駆り出しが(努力型のミルコになら総合は試練となったが、天才型のイグでは逆に気が乗らないだけで上の空に終わってしまう)彼をスポイルしたことは否めない。だが今年のGP開幕戦でさすがに彼も懲りたのではないだろうか。これまでムエタイ修行と抜群の体格を武器に、必殺の膝でヨーロッパ型の選手達を葬ってきた彼にとって、その自分の二つの武器が一切通じないミドル級の選手に翻弄され、天才の名を踏みにじられた今、彼に言い訳の言葉はない。学者の道を諦めてK-1に賭けた以上、本番のGPで二年連続の失態は大きな後退である。

今後彼がもう一度才能を磨きなおして、先行するボンヤスキーに追撃をかけるのならば、K-1マット上の温度は再び上昇する可能性が出てくる。

これに第一世代のオヤジパワーとの拮抗など、縦軸の絢が加わればしめたもの。キーはボン&イグら、k-1第三世代の突出にあるはずなのだ。
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