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松井稼頭央を苦しめたNYの名物ブーイング(2ページ目)

2004年メッツに鳴り物入りで入団した松井稼頭央。開幕戦、初打席初ホームランという衝撃を全米に与えたが、それ以降は低空飛行。彼を苦しめたプレッシャーとは何だったのだろうか?

瀬戸口 仁

執筆者:瀬戸口 仁

野球・メジャーリーグガイド

ブーイングの餌食となった松井稼

これに嫌気がさす選手がどれだけいたことか。他の都市のファンは、ここまでやらない。味方がエラーしても強烈なブーイングを浴びせることはまずない。やはり、ニューヨークは異常なのだ。

松井稼はその“餌食”になったといえる。前年度の松井秀の活躍があり、マリナーズ・イチローの存在もあって、「松井秀のパワーとイチローのスピードを兼ね備えている」というとんでもない触れ込みのおかげで、メッツファンの松井稼への期待は膨らみに膨らんだ。球団も名手レイエスを二塁へコンバートさせてまで「遊撃」を空け、「1番」も用意した。開幕戦のメジャー初打席で本塁打を放つ快挙を達成し、期待はさらに高まったが、その後がいけない。チャンスに凡打を繰り返し、守備では記録的な失策を積み重ね、相次ぐ故障に見舞われる。シーズン終盤には、打席に立つ松井稼へのブーイングは、シェイ・スタジアムの“名物”にまでなっていた。

ロッキーズ移籍後、ようやく実力が開花

04年にメッツへ入団した松井稼は、結局06年のシーズン途中にコロラド・ロッキーズへトレードされた。この事実を一番喜んだのは、松井稼自身だったかもしれない。家族ともどもニューヨークは大好きだったが、ファンやマスコミからの“攻撃”に嫌気がさしていたことは確かだし、本来の自分が出せない焦燥感もあった。ニューヨークの“呪縛”から解き放たれた松井稼は移籍したその年、32試合に出場し、打率.345、2本塁打、19打点、8盗塁の好成績をマーク。コロラド州デンバーという地方都市でファンやマスコミから叩かれる心配がなくなると、まさに水を得た魚のように翌07年も活躍。104試合に出場し、打率.288、4本塁打、37打点、32盗塁をマークし、初のワールドシリーズ出場まで果たしたのである。

昨年オフにフリーエージェントとなり、やはり大きな地方都市であるテキサス州ヒューストンのアストロズを選んだのは正解だろう。今季、でん部の手術を受けて出遅れたが、攻守にわたり生き生きとしたプレーを見せていることから、昨年同様の好成績を収める可能性は高い。 
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