カレッジ・バスケットボールが異様に盛り上がるワケ
アメリカの場合、高校野球でこの甲子園大会のような一大イベントはない。その代わり、そのイメージに近いものが、毎年3月から4月かけて行われるカレッジ・バスケットボールのNCAAトーナメント大会だ。全米中が熱狂するために別名「マーチ・マッドネス」（3月の狂乱）と呼ばれている。出場校はNCAAディビジョンに所属する65校で、1回戦から4回戦（地区優勝）までは4つの地区に分かれる。各地区の優勝校4校が4月に行われるファイナルフォー（準決勝、優勝決定戦）に進めるのだ。とにかく、その大学の出身者からその州の住民、出身者、そんなものは関係なく好きだからというファンらが入り乱れ、お目当てのチームが勝ち進んでいくごとに応援のボルテージをヒートアップさせていく。ただ単に応援するだけでは済まないのがアメリカ人だ。アメリカ中のあちらこちらで、この「マーチ・マッドネス」に関する賭けが行われる。
メジャーリーグ内でも例外でない。3月はキャンプ、オープン戦の期間中。フロリダに18チーム、アリゾナに12チームがそれぞれキャンプを張り、開幕へ向けての準備を進めていくが、この「マーチ・マッドネス」が始まる直前、ロッカールームにトーナメントの山型が張り出され、選手たちが好きなチーム、応援しているチームに賭けていくのだ。
この賭けは別に公認されているわけではない。アメリカのスポーツイベントで唯一、賭けが公認されているのはNFLスーパーボウル。歴代のテレビ視聴率のベスト10の中で7位までがスーパーボウル中継という驚異のイベントが行われる夜は、全米中のレストランやスポーツバー、パブ、自宅などで、細かい線引きがなされての賭けが公然と行われる。「マーチ・マッドネス」はそれほどまでの注目度はないにしても、それに準じる人気があり、賭けも大目に見られているのである。
日本の高校野球甲子園大会とアメリカのカレッジ・バスケットボールNCAAトーナメント大会。2つの大会から将来のスターたちが生まれることと熱狂的なのは共通項だが、日本の方が純粋な気持ちでゲームを見ることができ、声援を送ることができるのではないか。だからこそ、そこから生まれるドラマに涙することもできるのである。
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