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【高校野球】低反発球で甲子園が変わった!(2ページ目)

常葉菊川の優勝で幕を閉じた、2007年春の第79回センバツ高校野球。今回大会から「低反発球」、いわゆる「飛ばないボール」が導入されたことで、高校野球の内容が変化した。

執筆者:コモエスタ 坂本

低反発球が変えたゲーム


低反発球が変えたのは、打球の飛距離だけではない。飛距離やスピードが落ちることにより、試合の性質にかなり影響を与えたのだ。

前述のように、こすったような打球がスタンドインすることがなくなった。力まかせのパワーヒッターがとにかく振れば飛ぶということはなくなり、帝京や大阪桐蔭のように、大型選手を揃えて打ち勝つというタイプのチームは、決勝進出までに至らなかった。

好投手だけを擁するチームもまた、苦杯を喫した。初戦に優勝校の常葉菊川に敗退した仙台育英は、プロスカウト垂涎のエース佐藤のピッチングが光ったが、それでも投げ勝つことはできなかった。エース頼みのチームが低反発球のおかげで得点機会を得ることができず、ピッチャーを見殺しにしてしまうケースも今大会の特徴だったからだ。

結局、今大会は決勝に進出した常葉菊川と大垣日大に象徴されるように、好投手を擁した上で、守備が固く、またシュアなバッティングができるという三拍子揃ったバランスのいいチームが勝ち抜いた。これはパワー頼みの雑な野球から、低反発球の使用によって質的な良さがクローズアップされた結果だと考えられる。

まとめ


ビッグイニングやドキドキハラハラの大逆転劇が起こらなかったのも今大会の特徴である。去年の夏の甲子園であれば、逆転につぐ逆転、終盤のビッグイニングなどの試合も相次いで起こった。2006年夏大会の1試合平均得点は、2007年春センバツの7.55よりも3点以上多い10.67である。

夏の選手権大会は、地方大会からの疲弊に加えて、過密日程によって特に試合の終盤、投手の疲労が溜まる。打者を抑えきれない選手は連打をくらい、加えて「飛ぶボール」による速い打球が野手の間を容易に抜け、またスタンドを越え、大量点のビッグイニングが出来上がる。そんな光景がなくなったのだ。

一見派手に見える逆転劇、乱打戦は観客には興味深いかもしれないし、またメディアもこぞって取り上げるだろう。しかし、いわゆる「飛ぶボール」、高反発球の使用は、野球を雑にする。下記記事「飛ぶボールを検証する」でも述べた通り、大味な試合が増え、野球の緻密さが失われるのである。また、バッターに近い投手への危険性が増すということもある。

ただでさえ高校野球は金属バットを使用している。体格のいい選手も増えた。この状態で高反発球を使い続ければ、エンターテイメントと裏腹な危険を伴うものになっただろう。高校野球の低反発球への切り換えは、バランスの取れた野球を実現し、本来の野球の面白さを追求するという点、また安全性を高めるという点で、成功だったと言えよう。



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飛ぶボールを検証する
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