ナックルボーラーの弱点
マットソンの例で提示したように、ナックルボーラーは待球に弱い面がある。ナックルボールの極意は「ただバッターに向かって投げる」なのだが、「行き先はボールに聞いてくれ」なので、その時の調子や天候などによってボールをうまくコントロールできないことがある。
また、魔球と言えども変化が甘い場合は容易に痛打される。ホームランを打たれることもたびたびあるが、多くはライナーで弾かれるヒットとなる。そしてひとたびランナーを出すと大変だ。セットポジションになる上、球速が遅く、キャッチも難しいため、ランナーの盗塁企図が増える。また、ウェイクフィールドとバリテックの例で述べた通り、慣れないキャッチャーでは捕球が難しく、しばしばパスボールをしてしまうのだ。
さらに、ナックルボールを見切られた場合、ナックルボーラーは代わりのボールを持たない点が辛い。ナックルボールが決まっている際は120~130キロレベルのストレートでもタイミングを外すのには有効だが、もちろんそのストレートだけでは勝負できない。ただの遅い球のピッチャーになってしまうからだ。
広島捕手陣のナックルボール対策
新入団したフェルナンデスに対して、広島のキャッチャー陣も捕球練習を始めた。正捕手格の倉と石原がキャッチングの練習をしたが、ある日の練習では倉が投球を受けたが、56球のナックルのうち、8球で取り損ねなどのバッテリーミスをした。
ナックルボーラー用の大型ミット(皮が薄く、全体に大きいソフトボール用グラブのようなもの)も準備するなど、捕球対策は着々と進んでいるようだが、今後「専用キャッチャー」が用意されるかなど、広島捕手陣の対策も注目である。
ひとたび「いい風」が吹けば、もの凄い魔球となることもあるナックルボール。マットソンが来日初年度に3安打完封を達成したなど、ナックルボーラーによる面白い試合が見られることは受けあいだ。フェルナンデスが日本でどの程度活躍するか、この35歳ナックルボーラーの行方に注目しよう。