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西口の「悲運」、三度目の正直ならず 西武・西口の「認定」完全試合(2ページ目)

9回打者27人をパーフェクトに抑えた西武・西口が10回表に記録を阻まれた理由とは?

執筆者:コモエスタ 坂本

記録達成のアヤ


10回表、楽天の攻撃。この回の先頭は4度目の打席が回ってきた1番沖原である。沖原が捉えた打球は、この回から守備についたセカンド片岡のグラブをかすめて1・2塁間を抜け、ライト前ヒットになる。無念西口、記録が途切れてしまった。結局西口はこの回を0点でしのぎ、そしてその裏西武は楽天2番手の福盛から石井のタイムリーを放ち、サヨナラ勝ちを収める。

西口はハーラートップタイの16勝目を挙げ、西口の完全試合を阻止した一場のプロ初勝利はまたもおあずけである。それにしても西口、つくづく悲運だ。この試合、完全な結果論ではあるが、9回裏の攻撃時にセカンドランナーに代走片岡を送ったことが記録達成の明暗を分けたような気がしてならない。

2アウトからサヨナラのセカンドランナーとして、高木浩に足の速い代走を送る。これはとり立てて問題のある采配ではないだろう。しかしサヨナラはならず、10回表にその代わった片岡のところに打球が飛んで来るのだ。高木浩はこの試合、再三に渡って1・2塁間の打球を好捕して西口の記録をアシストしていた。沖原が放った打球も、守備位置がもう少し一塁寄りであれば、普通に処理できたところだ。

動いた方が負け?


もちろん、これをもって西武・伊東監督の采配ミスと責めるわけではない。勝負や記録はほんのちょっとしたアヤなのだ。しかし、どうしてもこの交代が記録達成を阻んだと思えるのは、動くべきでないところで動いてしまったからのように思える。勝負には「先に動いた方が負け」という面がある。特に優勢な側が無用に動くことで墓穴を掘るということがよくあるのだ。

結果としてこの試合、西武は負けなかったし、また西武が代走を送る前に楽天側の選手交代もあったが、西口の記録が途切れた「動機」は、この西武の選手交代にあったように思える。思えばここまで西武は一人の交代もなしに最終回まで来ていた。かなりの緊張感の中で西口の投げるリズム、西口の完全試合ペースを共有しながら守っていた野手という、ギリギリの世界を壊してしまったのだ。

もちろん、沖原の打球が代わったばかりの片岡の横を抜けていったことは単なる偶然だと言ってしまうのが普通だろう。しかし、野球の神様は細部に対して正直である。特に、完全試合のような調和と美が要求される局面で、その流れを壊したとなれば、野球の神様はそれを咎める。もちろん、西口自体の「悲運」が招いたものであったかもしれないし、対キャラである一場の磁力がなした業かもしれないが、とにかく普通に言っても「延長突入の可能性を考えたら、セカンド高木浩を替えるべきではなかった」のである。

9回パーフェクトという偉業


そして私は、こういう正式記録に残らない試合こそを語り継ぎたいと思う。公式記録であればどこかの記録にいつまでも残るが、この手の話は失われがちだからだ。西武ライオンズの西口は日本プロ野球で11年ぶりに9回27人をパーフェクトで抑えた。そのことのみは偉業として記しておきたいのである。


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