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ニューヨークメッツの松井稼頭央、もう後がないぞ 「松井稼頭央、崖っぷち」(後編)

2005年5月、ヤンキースとのインターリーグでミスを犯し、さらに寝違えでスタメンを外れる松井稼頭央。その間に控えのカイロはレギュラー獲りに虎視眈々と活躍。データと契約内容からカズオの今後を占う。

執筆者:コモエスタ 坂本


2005年5月、ヤンキースとのインターリーグでミスを犯し、さらに寝違えでスタメンを外れる松井稼頭央。その間に控えのカイロはレギュラー獲りに虎視眈々と活躍。データと契約内容からカズオの今後を占う。

<前編>
【PART1 稼頭央の前評判とNYの批判】
【PART2 新たな開幕と三度の降格と】
【PART3 サブウェイ・シリーズ以降の危機】

<後編>
【PART4 松井稼頭央の守備面】
【PART5 松井稼頭央の攻撃面】
【PART6 データで比較する稼頭央の守備】
【PART7 データで比較する稼頭央の打撃】
【PART8 松井稼頭央の今後は?】


【PART4 松井稼頭央の守備面】

カズオの守備はどうなのか?(ショート編)


2004年、ショートで23のエラーを記録し、シーズン終盤からセカンドにコンバートされた松井稼頭央。まず、彼のショート守備について述べておきたい。

人工芝から天然芝への対応に苦慮し、エラーもしばしば…(写真はイメージです)
日本では名ショートと呼ばれ、パ・リーグのゴールデングラブに何度も選出されてはいるが、実際のところ、千葉ロッテの小坂誠の方が守備力は上に見える。日本におけるゴールデンクラブ賞の選考方法が、打撃面を含めた印象に悪い意味で引きずられているからだ。もちろん、松井稼頭央の守備が下手とは言わないが、当時のパ・リーグ他チームに出場機会多く活躍するレギュラーショートが少なかったため、総合的に目立った働きをしていたカズオが受賞していたように思える。

実際、こんな話がある。現在、西武ライオンズでカズオの後釜としてショートを守っている中島裕之だが、ファーム時代から「松井ではなく小坂を手本にしろ」と教えられてきたそうだ。松井と小坂の守備について、長嶋茂雄流に表現すると以下のようになる。「パーンと捕ってパーンと投げる」硬い守備が松井稼頭央。「スッと捕ってスッと投げる」軟らかい守備が小坂誠。硬い守備と言えば、韓国から中日にやってきてやはりショート失格の烙印を押された李鐘範も同様だった。彼らはしばしば躍動感とスピードに溢れた迫力のあるプレーを演出はするが、全体としての安定感に欠けるのだ。

また、カズオの西武時代の守備は、パ・リーグ本拠地の多くが採用する人工芝に助けられていた面も否めない。特に本拠地の西武ドームは、ほとんどカーペットのような人工芝で、バウンドの勢いは死なずに安定し、さらに送球の際の踏ん張りが効き、またワンバウンド送球をしても確実なバウンドで一塁手の捕球が容易になるからだ。

これが天然芝主体のメジャー球場に行き、打球の勢いは死に、イレギュラーもあり、踏ん張りも安定しないので地肩と手首の強さが要求され、またノーバウンド送球かバウンドの確実なワンバウンド送球を期待されるとなると、パ・リーグ時代のスタイルが通用しなくなってしまった。プロ入り後に投手から内野手に転向して、主に人工芝球場で鍛えられてきたカズオの落とし穴である。天然芝グラウンド、またメジャーで初めてプレーするグラウンドへの対応はやはり厳しかった。

2004年は一塁を多く守っていたマイク・ピアッツアの拙守や、守り辛いと言われる本拠地シェイ・スタジアムの内野グラウンドに足を引っ張られた面もあるし、メッツ内野陣全体の連繋のまずさなどもあったが、やはり23エラーは多すぎた。メッツの内野を牽引することを望まれていた筈なのだが、残念ながら結果は逆になってしまった。

カズオの守備はどうなのか?(セカンド編)


2004年シーズン当初、それまでショートのレギュラーを期待されていた若手のホセ・レイエス(2005年でやっと22歳になる)を押しのける形で、カズオはショートの座についた。もちろん、日本での経験と実績が評価され、期待されたのだろう。そしてレイエスはセカンドにコンバートされた。

しかし、筆者の主観的な目で見れば、明らかにレイエスの方がショート向きで、カズオはメジャーではセカンドの方に向いていると思えた。レイエスはまだまだ成長途上だが、タイプとしてはショートを守っていた頃のアレックス・ロドリゲス(現ヤンキース)のタイプである。細身でバネがあって守備範囲が広く、手首も軟らかい。もちろん、身体能力という意味では松井もメジャー級なのだが、その能力ゆえに細かい技術をカバーしてしまった感がする。とにかく、印象で言えば「硬い」の一言に尽きる。「好手」ではあっても「名手」ではないのだ。

そして松井をセカンドにコンバートした場合、言うなれば巨人の仁志タイプのような(評価が分かれるところではあるが)硬くはあるが堅実な捕球・連繋プレーができ、また送球の安定性も出るタイプになるだろうと見ていた。何となくだが、メジャーという舞台ではセカンドは日本人向きに感じるのだ。

果たしてそのセカンドコンバートが吉と出たか凶と出たかだが、2005年5月のサブウェイ・シリーズ終了時点で36試合、299イニング出場でエラー5と多い。松井同様にセカンドを守るホワイトソックスに移籍した井口の方が守備機会やダブルプレーが多く、守備率が高い(エラーが少ない)。井口はホークス時代からセカンドのスペシャリストであり、やはり松井は急造セカンドの感が強いのだ。

急造セカンドらしいエラーの例としては、一塁にランナーがいる場合のゴロをジャッグルしたり弾いたりした例である。前者は、ダブルプレーを取るか一塁のみアウトを取るかで捕球後に二塁と一塁を左右見た挙げ句にお手玉だ。後者は前述した満塁からのタイムリーエラーで、これもダブルプレー狙いを焦ったゆえに目の前の球を取り損ねてしまった。
セカンド守備の捕球後どのアウトが可能か、二塁手としてのほんの0コンマ何秒のタイミングが体に染みついていないことが伺えた例である。

もっとも、これらのエラーは経験によって解決すると思われるし、またゲッツー時や盗塁刺時などのプレーには、セカンドの仕事をよく理解している動作も随所に見られる。しかし問題なのは、松井はショートのレイエスほど「待ってもらえない」選手かもしれないということなのだ。

【PART5 松井稼頭央の攻撃面】に続く→
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