プロ野球/プロ野球 関連コラム

外国人記者の見た日本プロ野球 「とある日本パ・リーグの試合」(2ページ目)

2004年日本シリーズ覇者である西武ライオンズのパ・リーグ公式戦最終戦を観戦した、デビッド・ワング氏によるレポート。

執筆者:コモエスタ 坂本

ホームラン、またホームラン

逆転弾の李スンヨプ
逆転弾の李スンヨプ
2回裏、ライオンズの4番バッター、ベネズエラ人のカブレラがソロ・ホームランを放ち、試合は動く。四球のランナーを一塁に置き、6番バッターでドミニカ人のフェルナンデスがレフトに2ランホームラン。ライオンズ、3点を先行する。対するマリーンズはチャンから点が取れない。

沸き上がるロッテ応援団
沸き上がるロッテ応援団
次に試合が動いたのは5回の表だ。チャンは二人を歩かせ、続くバッターにタイムリーを浴びる。3-1、ライオンズは2点のリードになる。坂本氏は、チャンの崩れるパターンだと言う。その通り、ドラマは次の回に起こった。チャンは2アウトを取ったが、マリーンズ4番のハワイアン、ベニー・アグバヤニにレフトへホームランを打たれる。マリーンズ・ファンで満たされたレフト・スタンドは沸き上がる。

その興奮はさらなる歓喜を呼ぶ。続く5番のアメリカ人、フランコがライトにホームランを放ち、さらに6番の韓国人、リーも同じ場所にホームランを運ぶ。3人の外国人による3連続ホームランで、3-4と逆転。そして、ここまでの5ホームランは全て日本プロ野球における外国人によるものだ。

そして、ゲームセット

ラッキー7のジェット風船
ラッキー7のジェット風船
1点を争う試合は続く。マリーンズはパシフィック・リーグ優勝のチャンスを掴むために絶対に負けられない。黒いユニフォームを着るマリーンズのファンは、その特徴的な応援を止めない。アジアにおける野球の応援はそれぞれ独特のスタイルを持っているが、日本、特にマリーンズのそれは際立っている。フットボール風のボイス・プレッシャーと歌、指笛、トランペット、そしてドラム。「オウエンダン」と呼ばれる人達は、アウェイのゲームでも欠かさず行くらしい(もっとも、千葉と埼玉はさほどの距離ではない)。

そして、日本のプロ野球ゲームで最も華やかな瞬間がやってくる。『7イニングス・ストレッチ』ならぬ『7イニングス・バルーン』がスタンド上空にいっぱい舞う。ゲームに戻ると両チームはリリーフピッチャーを少しだけ打ち、1点ずつをあげる。思いのほか、長い試合だ。しかし、日本のプロ野球では至って普通なのだそうで、原因は投球間隔や、投手交代に時間を使いすぎるからということだ。

この日本スタイルのゲームは、なおも緊迫感を保ちながら9回へと進む。マリーンズがさらに1点追加、6-4。その裏、ライオンズはマリーンズのクローザーを打ち、6-5。ゲームセット。

長い長いセレモニー

マリーンズのセレモニー
マリーンズのセレモニー
マリーンズのセレモニーが始まった。マリーンズのプレーヤーは今日の勝利に喜び、シーズンゲームを終え、彼らは去りゆく佐藤を『ドウアゲ』した。あまりにもドラマチックだった今日の試合に酔った私も、このセレモニーが続くのを静かに見守った。オープニングも、あれらのホームランも、そしてこの瞬間も、どこまでがゲームの中か外かわからないという不思議な錯覚を味わっていた。

長い長いマリーンズのセレモニーの後、さらに長いライオンズのセレモニーが始まった。監督がマウンドの上に設置されたマイクを通じて何かを語り、選手が集まり、引退する潮崎が紹介され、『ドウアゲ』が始まった。やがて潮崎は彼の子供たちと一緒にグラウンドを一周し、ライオンズのファンもマリーンズのファンも彼を大きな拍手で称えた。ホームに辿り着いた潮崎は「ウィニング・ロード」と呼ばれる階段をゆっくりと昇り、そして去っていった。今日のゲームはおしまいだ。試合開始後もじわじわと増え続けた観客たちは、それぞれの家へと帰ってゆく。私もまもなくここを去るだろう。

【後日談】に続く→
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