台風14号が近づき開催が危ぶまれたキリンチャレンジカップ、日本vs.ホンジュラス戦。両チームは雨の宮城スタジアムで練習を行いました。練習レポートとジーコ監督と選手コメントを現地の元川悦子さんからどうぞ。
■9月7日(水)19:20日本 vs. ホンジュラス 宮城スタジアム
<INDEX>
●2P目 ジーコ監督・中田浩・中田英選手のコメント
●3P目 中村・宮本・楢崎・加地選手のコメント
――――――――――――――――――――――――
4-4-2システムで攻撃パターンを確認
技術とカウンターに注意したい日本代表
台風14号の影響で九州中心に記録的豪雨となっている6日、日本代表が調整中の仙台も朝から大雨に見舞われた。鉛のような空といつ止むとも分からない雨…。せっかく仙台に来たのだから、時間があれば松島を観光したいなどと考えていたが、これではどこに行けない。仕事もたまっていたので、日中は滞在先のホテルでじっとしていた。そして午後2時半。自分でハンドルを握り、仕事仲間3人を仙台駅までピックアップして、公式練習の会場・宮城スタジアムに向かった。2002年日韓共催ワールドカップ・トルコ戦の時はシャトルバスを利用したのだが、雨と混雑が災いしてやたら道のりが長かった気がする。しかし距離自体は20km弱。この日は本番ではないため道路混雑もなし。20分くらいで現地に到着した。
宮城は3年前のままだった。ここに来ると、雨ばかり降るのは一体なぜだろう。この日も夕方が近づき、一段と雨脚が強まった。そんな中、日本代表の面々がピッチに登場。16時すぎからトレーニングをスタートさせた。
負傷離脱した三浦淳宏(神戸)を除く22人の選手たちはウォーミングアップを開始。ウォーキング、ストレッチ、ボールを使ったアップなどを消化した。この後、ジーコ監督がホンジュラス戦のスタメンと見られるGK楢崎正剛(名古屋)、DF加地亮(FC東京)、中澤佑二(横浜)、宮本恒靖(G大阪)、三都主アレサンドロ(浦和)、MF稲本潤一(ウエストブロミッチ)、中田浩二(マルセイユ)、2列目・中田英寿(ボルトン)、中村俊輔(セルティック)、FW高原直泰(ハンブルガーSV)、柳沢敦(メッシーナ)の11人を集め、何やら指示を送った。宮本によると「この2日間で攻めている時の守備を確認した」という。
話が終わった後、彼らはハーフコートを使ったフォーメーション確認をスタート。最終ラインからボールを回し、FWにくさびを当て、中盤に戻してサイドに展開。中央に折り返してフィニッシュまで持っていくという形を繰り返した。この練習後にはジーコ監督がDF4人を集めて話をした。ホンジュラスは鋭いカウンターを持つチーム。攻撃に行きながらも守りの意識を持つことが大事だということを徹底したようだ。
この後は試合前日恒例のミニゲーム。守備陣と攻撃陣に分かれて、選手たちはリラックスしながらボールを蹴っていた。この時間帯は強い雨が降っており、彼らはスリッピーなピッチの影響を最小限にとどめるため1タッチ、2タッチでボールを動かすように努めていた。雨の日は細かい技術が出にくい。日本もショートパスをつなぐのが得意なチームだが、ホンジュラスも条件は同じ。7日の本番は特徴を消しあうサッカーになりそうだ。
ホンジュラスとは2002年ワールドカップ直前にも神戸で対戦。つねに先手を取られる嫌な展開だったが、中村俊輔(レッジーナ)の直接FK、CKなどの活躍で3-3に追いついた。この試合に出ていた中田浩二は「あまり覚えていないが、スコアだけを考えるとかなり苦戦したような記憶はある」と話す。最近のホンジュラスについて宮本は「アメリカ戦を見たが、カウンターがしっかりしているし、守備も強い。フィジカルが強く、速さもある。真ん中から攻めると相手の人が多くてカウンターを受ける。アメリカもそうだった。だからある程度、真ん中に人が集まってもサイドを意識していくことが大事」と話している。今回の日本代表は4-4-2で、中盤にボールの持てる選手が揃うだけに、中へ中へとなりすぎないようバランスを保つ必要がある。
ギリシャに勝ち、ブラジルに引き分けたコンフェデレーションズカップ(ドイツ)から3ヶ月。欧州組の所属クラブでの状況はそれぞれ変化した。中村と中田は移籍し、中田浩二と稲本、高原は試合に出たりでなかったりを繰り返している。柳沢は今季も左サイドで起用されているが、やはりレギュラーポジションは取れていない。
それゆえ、ポジション争いも激化しつつある。中田、中村の攻撃的MFは不動だが、FWやボランチは分からない。FWで最終予選を引っ張ってきたのは大黒将志(G大阪)。彼の働きは明らかに高原、柳沢より上だった。ここへきて玉田圭司(柏)も調子を上げている。結果を出せないものは指揮官の信頼を失うのだ。そういう意味でも高原、柳沢の危機感は強いだろう。
ボランチにしても最終予選をリードしてきた福西崇史(磐田)がいるし、ジーコ監督が絶対視する小野伸二(フェイエノールト)も右足骨折が癒え、ピッチに戻りつつある。東アジア選手権(韓国)では阿部勇樹(千葉)、今野泰幸(FC東京)という若い世代も台頭。ますます生存競争は厳しくなっている。そのあたりの事情は中田浩二もよく理解している。「自分たちはいつ代表に合流できるか分からないし、限られたチャンスをしっかりモノにしないと来年につながらない」と話す。実績では勝る彼らの意地を見せてほしいものだ。
コンディションもまちまちだが、彼らのコンビがどのくらい冴えるのかも注目だ。中村は「コンフェデと同じプレーができるとは限らない。でもいろんな展開はある。パスをつないだり、放り込んだり、相手の出方によって対応していきたい。落ち着かせるところは落ち着かせて、目に見えないプレーをしていきたい」と話した。ホンジュラスという苦手なタイプの相手を対峙し、中田と中村のダブル司令塔がどうゲームをコントロールするか興味深い。
2006年ドイツワールドカップに向け、新たな一歩となるこの試合。台風14号は日本海側を抜けており、幸いにして、懸念された試合中止もないようだ。とにかく選手たちには内容と結果にこだわった戦いを見せてほしい。
●次ページはジーコ監督・中田浩・中田英選手のコメントです
●中村・宮本・楢崎・加地選手のコメントは3P目です