迎えた後半8分、ついに同点ゴールが決まる。始まりは中村からだった。彼のさばいたボールが三都主につながり、ゴール前へ走りこんだ小野に通った。その瞬間、彼はためらわず右足を一気に振り抜いた。この得点には日頃、冷静な彼も両手を高々と挙げて喜びを表現していた。
小野伸二の素晴らしさは英国メディアも絶賛したが、中村も本来のパスワークを徐々に取り戻していった。遠めからもシュートを放ち、貪欲に追加点も狙った。序盤こそは「チームに合わせよう」という遠慮がちな姿勢が目立ったが、後半の中村にはダイナミックが感じられた。
昨年11月の負傷以降、セリエAのゲームから遠ざかり、2月のオマーン戦(埼玉)では大事なPKを失敗。3月のシンガポール戦では途中交代の屈辱を味わうなど、ここ最近の中村は苦悩の日々を強いられていた。試合カンが鈍り、「ボールを持ってもいい時のようなイメージが沸かないし、思った通りにプレーできない」と辛そうに打ち明けたこともあった。
そんな低迷を経て、ついにエースナンバー10をつけた男が復活の予感を感じさせたのだ。「今日は自分の感覚でできた。相手も相手だったし。ボールを落ち着かせたり、スピードアップしたりと変化をつけながらやれたしね。でも最初の時間帯が納得いかない。ああいう時こそ、スルーパスとか球を落ち着かせるとか、サイドチェンジとかを、自分が中心になってやらなきゃいけない」と高いレベルの欲求を口にするようになったのだ。
絶好調の小野に加えて、中村俊輔が輝きを取り戻せば、ジーコジャパンの攻撃は一段と多彩になるはずだ。この日は結局、1-1で引き分けた。いくらイングランド相手とはいえ、勝てるチャンスを逃したことはいただけない。宮本を軸とした守備陣が1対1で守りきれない場面も何度かあり、このあたりも修正が必要だろう。稲本潤一が左足首を負傷するアクシデントに見舞われたのも痛い。藤田俊哉(磐田)ら負傷者続出は、インド戦、アジアカップに向けての不安要素といえる。
それでも、今回の2試合で日本代表はまた一歩前進した。ジーコ監督の指示うんぬんは関係ない。選手たちが自発的に考え、何をすればいいか解決策を探そうとするようになってきているのだ。これは前向きな材料と考えていいだろう。
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