前半45分間だけのプレーにとどまった中村も復活の兆しを見せた。相手DFと対峙した時、抜き切るだけのキレはまだないが、今の自分にやれることは全てやろうという気構えが見て取れた。「伸二は長いボールを出すのが得意だし、うまく前線にパスを入れていたから、自分は引き気味でプレーした方がいいと思った」と献身的なコメントも残している。以前の中村だったら、自分でゴールに絡むプレーをしないと納得しなかった。しかしイタリアで苦しい時間を過ごし、「チーム内での自分のあり方」を考えるようになったのだろう。中村の単独トップ下は完全に機能したとはいえないが、そう悪くもなかった。時間をかければ、修正されていくだろう。
後半の日本は大幅にメンバーが交代。システムも4-4-2に変更され、テスト的な要素が強くなった。それが災いしたのか、またもや後半開始早々にセットプレーからヘルガソンにヘッドを決められた。ジーコ監督は「いい位置でファウルを与えれてしまったら、失点の確率は高くなる。不用意なファウルは極力減らさないといけない」と守備陣に苦言を呈した。これは今後、修正しなければならない大きなテーマといえる。
それでも、後半の日本は数多くのゴールチャンスを作った。鈴木隆行(ゾルダー)がペナルティエリア内で倒されて得たPKを三都主が決め、3点目も奪った。その後も小笠原満男(鹿島)のドリブルシュート、柳沢敦(サンプドリア)のGKとの1対1など、3~4点入っていてもおかしくないほどの絶好機の連続だった。しかし彼らは肝心のゴールを奪えない。鈴木と柳沢は玉田と久保に大きな差をつけられる格好になってしまった。
それでも、全体を通してみると、「欧州組と国内組の融合」というテーマは確実に前進した。中村のトップ下もそれなりの可能性を感じさせた。ジーコ監督がこれまで積み上げてきた「中田中心のチーム」、「欧州至上主義」、あるいは「4バックにこだわった戦術」のいずれもなくなりつつあるが、チームはようやく「健全な方向」に進もうとしているようだ。
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