光量が足らないとどのように写るのか
では実際に、フラッシュの光が届く範囲をサンプル画像で見ていきましょう。GN36のフラッシュを使っての実験です。ISO感度は100で設定。カメラから被写体の木までの距離はおよそ10mです。
F3.5で撮影。36÷3.5=10.5なので、10mある距離でも被写体の木ははっきり写っています。適正露出で撮影が可能な距離です。 |
F5.6で撮影。光の届く距離は、約6.4m。被写体までかなり光が足りません。 |
F8で撮影。光の届く距離は約4.5m。撮影距離の半分にも満たない光量では、このようにほとんど被写体は写りません。 |
このように、光量の飛ぶ距離を知ることで、フラッシュの光の届く範囲をコントロールして撮影することができます。
自分のフラッシュのGNはいくつ?
ここまで読まれると、お持ちのフラッシュのGNはいくつなのかと興味を持たれるかもしれませんね。外付けのフラッシュなら、説明書に記載されているはずなので確認してみてください。最近のデジタル一眼レフは、内臓フラッシュが搭載されている場合が多く、外付けフラッシュを使わない方も多いかもしれません。内臓フラッシュのGNは12前後のことが多いようです。
GN12で被写体までの距離が10mの場合だと、12÷10=1.2、ISOを400に設定したとして1.2×2.0=2.4、となります。ズームレンズでF値の明るいものはF2.8ぐらいですから、GN12程度のフラッシュでは、10m光を飛ばすのもISOを
高めていかないと出来ないということになります。
ならば、ISOを出来るだけ高く設定すれば、フラッシュのGNが小さいものでも代用できるのでは、と考えるかもしれませんね。ただ、ISOの感度をあげればあげるほど、画像が荒れてきますので、きれいな画像を撮りたいならあまりISO感度をあげないほうがいいでしょう。
遠くのものにはフラッシュは使わない
冒頭で書いたスタジアムでの観客席から選手を撮るときには、フラッシュを使っても光は届かないということになります。実際、スタジアムで試合の写真を撮っている報道フォトグラファーは、フラッシュは使いません。試合会場の明るさに合わせて写真を撮っています。それは距離があるためフラッシュは届かないからです。
これが相撲の撮影になるとフラッシュを使用します。土俵までの距離が近いので、フラッシュの光が届くからです。
フラッシュを使って撮影するのは、10m未満の距離を目安に使い、遠い距離の被写体には、フラッシュは使えない。このことだけでもご理解いただければ大変嬉しく思います。
いつも思うのですが、スタジアムでフラッシュ撮影をやめるように呼びかけるアナウンスも「観客席からフラッシュを使われましても、遠くの選手を撮るのには効果はありません」とすれば、フラッシュを使わないひとも増えるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
最後にウンチクをひとつ。フラッシュとともによく使われるストロボというワード。フラッシュとどっちを使えばいいのと迷うときありませんか。実は、ストロボは商品名。なので一般的な名称としては、フラッシュもしくは、スピードライトと呼ぶのがいいようです。
写真・テキスト 瀬川陣市
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