注目の「空家プロジェクト」
作品を支えるサポーターや現地の人々とも交流したい
日本大学芸術学部彫刻コース有志「脱皮する家」 家の内部を全て彫り上げた注目の「空家プロジェクト」のひとつ |
古巻和芳+夜間工房「繭の家」 Photo(C)Kenji Yamakita 地域でかつて育てられていた蚕を再び育て、その繭でつくられた作品 |
日本大学芸術学部彫刻コース有志「脱皮する家」は、日本大学の鞍掛純一を筆頭にOBや学生らが、改修後の空家内部の壁や柱などの表面全てを彫り上げ、彫刻刀一本で新しい空間をつくりあげた作品。
私がこちらを訪れた時には、実際に作業に加わっていた学生スタッフの方が案内をしてくださり、制作の様子などを聞くことができました。週末や長期の休みを使いながら、常時十数名が作業にあたり、約2年かけて完成させたそうです。
一様に統一された彫りで埋め尽くされた空間は、今にも何かが動き出しそうな異様な迫力を持っているように感じられました。
古巻和芳+夜間工房「繭の家」では、かつて養蚕が盛んだった地域で住民の協力により再び蚕を育て、その繭を素材に制作された作品が展示されていました。
会場では作業に加わった現地の住民の方が温かく迎え入れてくださり、お茶と手作りのお漬物をいただきました。いろいろとお話しを伺うこともでき、楽しいひと時となりました。
「空家プロジェクト」は、作品を訪ねるというよりは家にお邪魔をさせてもらうという感覚に近いものがあります。作品を支えるサポーターや現地の方々はもちろん初対面なのですが、気持ちのよい挨拶さえできれば、作品を媒介にして、自然と会話が生まれるのです。
作品とともに、その家に流れてきた時間を感じながら、今そこに関わっている方々のお話しに耳を傾ける。その全てをひとつの貴重な体験として、楽しみたいプロジェクトです。
各地区の拠点となるトリエンナーレセンターと「ステージ」作品
十日町ステージ「越後妻有交流館 キナーレ」 ジョアナ・ヴァスコンセロス《ボトルの中のメッセージ》と藤木隆明+工学院大学藤木研究室《水景色》が目をひく施設中央部 |
橋本典久+scope《life-size》 昆虫の姿を人間大のサイズに拡大した作品が多数展示されている |
ホームページなどでも手に入れることの出来ない最新の情報を手に入れることができるので、各地区の作品をまわる前に寄っておくと、より楽しむことができそうです。
十日町・松代・松之山地区では2003年に建造された「ステージ」作品(施設)に「トリエンナーレセンター」が設置されています。施設そのものが作品でもある「ステージ」および周辺では、様々な催し物や作品が展開されていました。
「越後妻有交流館 キナーレ」は十日町地区のステージで池を囲むようにして建てられた「口」の字型の建物が特徴です。池の中にはジョアナ・ヴァスコンセロスの作品《ボトルの中のメッセージ》と藤木隆明+工学院大学藤木研究室の作品《水景色》があり、目をひいていました。
松之山地区のステージ「森の学校 キョロロ」の展示室では橋本典久+scopeによる作品《life-size》の数々が展示されていました。高解像度のスキャニング技術を利用して、昆虫の姿を人間大のサイズに拡大した作品を多数見ることができました。
このような主要施設をめぐるだけでも、芸術祭を楽しむことができます。
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