離婚する人が後を絶ちません。夫婦の関係はなくなっても、別れた子どもとの親子関係は変わらないもの。今回は、別れた親が子どもに会う権利、「面接交渉権」を取り上げます。
別れた子どもに会いたい!
別れた親が子どもに会うのは、権利として認められている
娘はもう8歳になります。このままでは、私の存在は娘の記憶からなくなってしまうかもしれません。元妻が再婚し、再婚相手が娘を養子に迎えることになれば、私は娘と会うことはできないのでしょうか。
面接交渉権とは?
別れた親が、別れた子と会うことは「面接交渉権」といい、権利として認められています。別れても親子であることに変わりがない以上、親が別れた子に会いたいと思うのは自然の感情です。別居親と子との円満で継続的な交流は、親と子の絆を保つことであり、子も別居親が自分を見捨てていないことを確信できることから、子の福祉にとっても望ましいものだといえます。ただし、別居親による面接交渉が、子どもの福祉に反するような場合には、認められないことがあります。典型的なのは、別居親が児童虐待をするなら、親としての適格性に欠ける場合です。また、面接交渉を実施することにより、子どもが動揺し、精神的に不安定になるなどして、子どもの発育に悪影響を与える可能性がある場合には、面接交渉の開始時期を、もう少し子どもが大きくなるまで遅らせるなどの工夫が必要になる場合があります。
再婚相手と養子縁組した場合
では、ご相談のケースのように、元妻が再婚し、娘が再婚相手と養子縁組したような場合はどうでしょうか。たとえば、娘が再婚相手を本当のお父さんだと思い込んでしまっているようなケースでは、面接交渉を実施することにより、突然2人のお父さんが現れて混乱するということも考えられます。したがって、そのような事情がある場合には、もう少し娘が大きくなるまで(10才~12才程度)待ったうえで、面接交渉を実施したほうが良いような場合があるかもしれません。しかし、基本的には、面接交渉は認められるべきでしょう。どうしても会わせてくれない場合には、家庭裁判所に調停を申立てることになります。
配偶者に対する感情とは区別して
ちなみに、ご相談のケースのように、元妻が元夫に、子どもを会わせようとしないケースはよくあります。離婚した夫婦ですから、お互いに感情のしこりが残っており、連絡すら取りたくもないということもよくあります。しかし、元配偶者に対する感情と、子どもに対する感情は区別して考えなければなりません。大嫌いな元配偶者であっても、子どもにとっては、大切な親なのです。両親の離婚という子どもにとっても不幸な出来事が起きた後、子どもが他方の親と触れ合う機会を持つことなく成長していくことは、長期的に見て子どもの心身の健全なる発達にとってマイナスです。面接交渉を通じて、子どもが子どもなりの目で自分の親がどういう人間であるのかを認識すること、もう一方の親が自分に愛情を持ってくれていることを知ることも、この健全なる成長にとって非常に大切なことなのです。