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名作『ボヴァリー夫人』が映画化(3ページ目)

名作『ボヴァリー夫人』が鬼才ソクーロフによって映画化! 原作の魅力をご紹介します。

石井 千湖

執筆者:石井 千湖

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いつまでも夢を捨てられない女の子の滑稽な人生

ボヴァリー夫人
<DATA>タイトル:『ボヴァリー夫人』出版社:角川書店文:姫野カオルコ、絵:木村タカヒロ価格:1,995円(税込)シャルルとエマを永遠の少年少女として描いているところが新鮮な絵本。
エンマは、セレブと同じ服を着て、物語のような恋をしたい。今の時代にもたくさんいる、ふつうの女の子です。

結婚しても子供を産んでもその願望を捨てられないから、支払いはいつでもいいという商人の甘言にのせられて高価な品物を買いまくり、夫以外の男との恋に夢中になります。

でも、贅沢な衣装を着てもエンマがいるのは農村で、運命の男だと思った愛人は一時の快楽を得ることしか考えていません。理想と現実のズレが、なんともいえない可笑しみを醸し出すのです。

例えば、都会的な遊び人ロドルフがエンマを誘惑する場面。村の共進会(審査員がすぐれた農産物や家畜を表彰するお祭りのようなイベント)の日に、ロドルフはお洒落な靴で馬糞を踏みながらエンマを誘いだします。そしてロドルフの歯の浮くような口説き文句と、共進会におけるお偉いさんの演説が並行して書かれる。きっとエンマにも演説は聞こえているのですが、聞こえないかのようにうっとりします。ダサい現実を無視して、夢にしがみつくエンマの愚かさを容赦なく描く。なんて意地悪!

他にも教会に行って不義を告白しようとしたのに司教にまったく相手にされないところなど、滑稽なシーンがいくつもあります。状況は、エンマをなかなか悲劇のヒロインにさせてくれません。だからこそ彼女を憎めないし、身近な存在に感じます。

時代や国を超えてこの小説が読み継がれている秘密は、文章そのものの面白さと、エンマの描き方にあるのでしょう。未読の方は、ぜひ一度、手にとってみてください。

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