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感動のロボット小説BEST5(4ページ目)

2009年10月に映画「ATOM」が公開予定。『鉄腕アトム』をはじめとして、なぜロボットの物語は人間の心をとらえるのか? ロボットを題材にした小説を集めてみました。

石井 千湖

執筆者:石井 千湖

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4.希望の象徴としてのロボット瀬名秀明『ハル』

ハル (文春文庫)
<DATA>タイトル:『ハル』出版社:文藝春秋著者:瀬名秀明価格:620円(税込)
『アイの物語』ではアンドロイドが人間に昔話を語っていたが、瀬名秀明の『ハル』はロボットがロボットに昔話を語る。ヒトは滅亡して久しいという設定である。

大人のロボットが、ヒトを知らない子どものロボットに、「鉄腕アトム」の存在を教え、ヒトがアトムのようなロボットに何を託していたのか、5つの物語を通して伝えていく。日本のロボット研究者に取材したノンフィクション『ロボット21世紀』(文春新書)も書いている著者だけあって、技術に関する記述がリアルだ。

作中に登場する災害救助ロボットや赤ん坊を真似ながら人工知能を育成するロボットなど、現実に存在するのかどうかわからないが、ありえる感じがする。そして読み進めていくうちに、過去よりもっと素晴らしい社会にしたいという夢を見て、技術を発展させてきた人間の姿が浮かび上がる。ロボットは人々が未来に抱く希望の象徴として描かれているのだ。

例えば、「亜季への扉」は、捨て猫ならぬ捨てロボットを拾った少女と、ロボット・コンサルティングをしている青年の物語。発売後たった1年しか経ってないのに、持ち主に捨てられた愛玩用ロボット。拾ったロボットに“ロビイ”という名をつけて友だちになろうとする少女。少女の手助けをする青年とその父。彼らはかけがえのない関係を築くが、突然、少女からの連絡が途絶える。

彼女はロボットに絶望したのだ。そのわけがなんとも切ない。ワクワクしながら待っていたアトムの誕生日が過去になってしまったとき、ヒトはどんな未来を思い描くのか。絶望のあとに見えるわずかな希望が明るい読後感を残す。

もしも、ロボットがヒトにとって無用のものになってしまったら……。最後に紹介するのは、人間の心を映す鏡のようなロボットの物語。

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