“音楽と夕暮れ”の魅力とは?
<DATA>タイトル:『夜想曲集:音楽と夕暮れをめぐる五つの物語』出版社:早川書房著者:カズオ・イシグロ価格:1,680円(税込) |
クラシック、ミュージカル音楽、ジャズ……作中で流れる音楽のジャンルはさまざまだが、いずれも登場人物の人生と深く結びついている。そこがまず魅力的だ。
また、若き日に抱いていた夢、恋愛における情熱、仕事で得た名声、すべてが太陽のように沈んでいく、黄昏の時の心の動きが描かれる。悲しいけれども、暮れていく空の美しさも感じさせる。
その上、友人の私物を覗いてしまった英語教師の隠蔽工作(犬の臭いを作ろうとするところが傑作!)、サックス奏者とセレブの深夜の冒険など、ユーモラスな場面もあって、実に複雑な味わい。
夏の旅先、できれば夕暮れを眺めお酒でも飲みながら読んでみたい。大人にこそオススメの短編集だ。
【今年一番の話題の本といえばこれ】
・寄り道しながら『1Q84』を読む【1】