先の展開がまったく読めない旅
<DATA>タイトル:『メモリークエスト』出版社:幻冬舎著者:高野秀行価格:1,470円(税込) |
特に驚くのが第4章の「大脱走の男」だ。著者は読者の依頼がきっかけで、自分がもう一度会いたい人間のことを思い出す。11年前、ウガンダの安宿で出会ったコンゴ人、リシャール。理不尽な事件に巻き込まれ祖国を脱出した彼に、著者は逃走費用を用立てた。
リシャールはそれから五つの国の国境を越え、南アフリカのケープタウンにたどりついたらしい。著者はメモリークエストの旅を続けていくうちに、読者の尋ね人よりもリシャールを探したいという気持ちになってしまう。企画の主旨そのものが揺らぐ大転換。しかし、これぞメモリークエストの真骨頂といえる旅になる。
著者を待ち受けていた新しい世界とは……。