書籍・雑誌/話題の本関連情報

高野秀行『メモリークエスト』に興奮!(2ページ目)

未知の世界で見たものを面白おかしい文章で描く人気辺境作家・高野秀行。最新刊は他人の記憶を旅する『メモリークエスト』だ。

石井 千湖

石井 千湖

話題の本 ガイド

年間300冊以上の本を読むブックレビュアーがジャンル問わず話題の本を紹介します。

プロフィール詳細執筆記事一覧

先の展開がまったく読めない旅

メモリークエスト
<DATA>タイトル:『メモリークエスト』出版社:幻冬舎著者:高野秀行価格:1,470円(税込)
目的地が定められている旅でも、途中で何が起こるかわからない。他人の記憶という、あやふやなものをめぐる旅ならなおさらだ。尋ね人は見つかるのか。見つかったとしても、どんなリアクションをするのか。先の展開がまったく読めないところが面白い。

特に驚くのが第4章の「大脱走の男」だ。著者は読者の依頼がきっかけで、自分がもう一度会いたい人間のことを思い出す。11年前、ウガンダの安宿で出会ったコンゴ人、リシャール。理不尽な事件に巻き込まれ祖国を脱出した彼に、著者は逃走費用を用立てた。

リシャールはそれから五つの国の国境を越え、南アフリカのケープタウンにたどりついたらしい。著者はメモリークエストの旅を続けていくうちに、読者の尋ね人よりもリシャールを探したいという気持ちになってしまう。企画の主旨そのものが揺らぐ大転換。しかし、これぞメモリークエストの真骨頂といえる旅になる。

著者を待ち受けていた新しい世界とは……。

  • 前のページへ
  • 1
  • 2
  • 3
  • 次のページへ

あわせて読みたい

カテゴリー一覧

All Aboutサービス・メディア

All About公式SNS
日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
公式SNS一覧
© All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます