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アカデミー賞映画原作とブッカー賞受賞作(2ページ目)

4月に公開予定の「スラムドッグ$ミリオネア」(アカデミー8冠!)原作『ぼくと1ルピーの神様』と、2008年ブッカー賞受賞作『グローバリズム出づる処の殺人者より』をご紹介します。

石井 千湖

執筆者:石井 千湖

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2008年ブッカー賞受賞作『グローバリズム出づる処の殺人者より』

グローバリズム出づる処の殺人者より
<DATA>タイトル:『グローバル出づる処の殺人者より』出版社:文藝春秋著者:アラヴィンド・アディガ価格:1,890円(税込)
本書は〈世界のテクノロジーとアウトソーシングの中心に住む起業家にして思想家ホワイト・タイガー〉と自称する男・バルラムが、インド訪問を控えた中国首相・温家宝宛てに綴る手紙、という設定で書かれている。

バルラムは、インドのなかでも貧困層が多い北部の小さな村で、人力車夫の息子として生まれた。彼は授業を怠けてばかりの教師や学ぶ気がない子どもたちに囲まれていたにもかかわらず聡明で、“ジャングルのホワイト・タイガー”と呼ばれるような子だった。ところが、家の借金が原因で途中で学校を辞めさせられてしまう。

そして、茶店の店員を経て金持ちの家のお抱え運転手になった彼が起業家になるまでの経緯が語られる。その語り口がいい。彼は急成長した経済大国インドの実情や、その成長の秘けつを学びにくる温家宝をいたるところで皮肉る。

文藝春秋のサイトで冒頭が立ち読みできるので、ちょっと見てみてほしい。

『ビジネスを成功させる十の秘訣!』だの。『あなたも一週間で起業家になれる!』だの。そんなもので金をむだにしてはいけません。アメリカの本などもう古い。これからはわたしです。

というくだりがあるのだが、後に続く驚くべき告白を読むと、なんとすごいブラック・ジョークだと思う。ちょっとやそっとじゃ脱け出せない貧困の檻に入れられて、家畜のように扱われてきた彼は、人間らしく生きるために、かなり残酷なことをやってのける。それを諧謔をまじえながら、サクセス・ストーリーとして語るのである。安易な共感も同情もゆるさない。最後まで黒さが突き抜けていて、爽快感すら感じる1冊だ。

【関連サイト】
『スラムドッグ$ミリオネア』試写会ご招待…All About「映画」の試写会プレゼント記事。〆切は3/11です。

※サムネイルのタージマハルの画像(c)世界のフリー素材写真M-Studio

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