ガリレオシリーズ最新長編『聖女の救済』
<DATA>タイトル:『聖女の救済』出版社:文藝春秋著者:東野圭吾価格:1,700円(税込) |
本書はある夫婦が別れ話をするシーンから始まる。IT企業社長の真柴義孝とキルト作家の綾音だ。義孝にとって結婚は子どもを持つための手段。1年経っても綾音が妊娠しなかった場合、離婚するといっていた。冷酷に期限が来たことを通告され、妻は決意する。
私はあなたを心の底から愛しています。それだけに今のあなたの言葉は私の心を殺しました。だからあなたも死んでください――。
そして義孝が毒殺される。自宅でコーヒーを飲んでいて倒れたのだ。綾音は土曜日の朝に実家のある北海道へ発ち、義孝が死んだのは日曜日の夜。彼は土曜の夜と日曜の朝にも同じコーヒーを飲んでいて、そのときは無事だった。強い動機はあるものの、綾音の犯行は不可能と思われた。しかし綾音に疑惑を抱く内海は、湯川に協力を要請し毒物の混入方法を解き明かそうとするが……。
湯川が出した結論は「虚数解」。シンプルかつ盲点を突かれるトリックが実に面白い。ドラマと映画で湯川を演じたあの人の名前もちらっと出てくる。
次ページでは同時刊行の短編集をご紹介。