10月 滅びの美を究める
<DATA>タイトル:『斜陽』出版社:新潮社著者:太宰治価格:340円(税込) |
朝、食堂でスウプを一さじ、すっと吸ってお母さまが、「あ」と幽かな叫び声をお挙げになった。
という一文で始まる『斜陽』は、戦後に没落した貴族の生活を綴る。語り手のかず子の母は、当時でも絶滅危惧種だったほんものの貴婦人。スウプはさじをヒラリと舞わせながら飲む。お母さまの行動でなんてったってすごいのは、秋の月見の後にやったあること。普通の人だったらとんでもなく下品だが、お母さまだと不思議と可愛く見える。
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タイトル:『斜陽』
出版社:新潮社
著者:太宰治
価格:340円(税込)
太宰の作品について、本人に面と向かって嫌いといった作家は? 答えは次のページに。