~breakfast~米原万里『旅行者の朝食』
昨年亡くなった著者。著書はどれをとっても知的ユーモアにあふれています。旅のお供にもどうぞ。 |
こんな小咄があるのだそうだ。ある男が森の中で熊に遭遇し、お前さん、何者だい?と質問される。男がわたしは、旅行者ですがと答えると、熊はいや、旅行者はこのオレさまだ、お前さんは、旅行者の朝食だよという。たったそれだけで、著者にとってはまったくおもしろくない。それなのに、ロシア人は小咄に限らず、このフレーズが出てくるだけでおかしくてたまらないという風にお腹をユサユサ揺するらしい。いったい「旅行者の朝食」の正体とは何なのか。長年の謎が、別の小咄を知ったことで解ける。
他にも、チョウザメには卵が何度でも取れるようにYKKのジッパーがついているなんて話が出てくる「キャビアをめぐる虚実」、有名な絵本に対するツッコミが目からウロコの「サンボは虎のバター入りホットケーキをほんとに食べられたのか?」など、元ロシア語会議同時通訳者ならではの薀蓄と、ミステリのような驚きが味わえるグルメ・エッセイ集だ。
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タイトル:『旅行者の朝食』
出版社:文藝春秋
著者:米原万里
価格:490円(税込)
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