『ワイルド・ソウル』垣根涼介 幻冬舎 1900円
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■未開の地アマゾン入植地での地獄の日々。生還者たちの復讐劇の結末やいかに!

『午前三時のルースター』でサントリーミステリー大賞・読者賞をダブル受賞してデビューした著者の最新作。大藪春彦賞と吉川英治新人賞をダブル受賞したが、その勲章にふさわしいできばえだ。

 まず、あらすじを。
 舞台は、アマゾン、ブラジル、そして日本。高度成長期が始まった1961年、23歳の若者・衛藤は、外務省移民課の推奨するアマゾン移民の一員として、ブラジルの赤い大地に降り立つ。開墾済みの広い土地で誰しもが豊かな生活を営むことができると聞かされてきた衛藤たちだが、彼らが長旅に末に眼にしたのは、アマゾンの奥地、人を受け入れない熱帯雨林の未開の地だった。過酷な日々の中、次々と風土病に斃れる仲間たち。衛藤も、同行した妻や弟を喪い、絶望のあまり自殺を試みるが、同じ入植者である野口に止められ、生きてその地を捨てる。

 それから十年。苦闘の末ようやくサンパウロで生活の基盤を築きた衛藤は、かつての仲間を探すべく、再び、アマゾンの奥地の入植地に戻る。彼が、その地で見つけたのは、野生児と化してたった一人で生き抜いていた少年。それは、かつての自殺を止めてくれた野口の息子啓一(ケイ)だった。衛藤は、彼をサンパウロに連れていき、自分の息子として育るのだった。

 さらに十数年の時が流れ、衛藤に救われた少年・ケイは、彼の妻・エルレインのおおらかな愛に育まれ、ちょっとワルだがエネルギッシュな若者へと成長する。安定した生活と愛する家族を得、衛藤にとっても、ケイにとっても、かつての悪夢を遠い過去へと押し流されていったかのように見えた。だが、運命は再び彼らに牙をむく。エルレインとその娘が強盗に殺害されたのだ。自分たちとブラジルの大地をつないでいた存在を喪い、再び、過去の亡霊と対峙ることになった彼らは、かつて自分たちを騙し、見捨てた日本の外務省とその周辺にむらがる権力に対する復讐を決意するのだった--。

 過去と現在、ブラジル、アマゾンと日本を交錯させながら、起伏あるストーリーが織りあげられていき、一刻も読者を飽きさせない。
 何より、棄民という重いテーマを真正面から扱う社会派小説でありながら、その手のものにありがちな紋切り型でないのがいい。また、復讐劇にありがちな、過剰な湿り気もなく、読後感は、爽快だ。

 この魅力は、やはり、ケイという人物の造形に負うところが大きいだろう。