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食欲の秋到来!おいしいエッセイBEST3(2ページ目)

暑い夏も過ぎ、もりもりと食欲がわく秋がやってきました! ひと一倍食い意地のはったガイドが、三度の食事に見立てて、厳選した食エッセイ3冊をご紹介します。

石井 千湖

執筆者:石井 千湖

話題の本ガイド

~lunch~金井美恵子『待つこと、忘れること?』

待つこと、忘れること?
「口においしく、眼に楽しく、頭におかしく、ピリッと栄養」が本書のモットーだとか。舌鋒も鋭い!
薀蓄だったら『待つこと、忘れること?』も負けてはいない。小説家が姉と猫との暮らしを綴った一冊だが、岡本かの子の歌集の紅玉リンゴから、オーソン・ウェルズの映画のフォワグラ、宮内庁職員食堂の服喪メニューまで、さまざまなコネタをまじえながら食べ物について語る。

吉田健一の娘から習ったという「ジャガイモとネギと牛肉の重ね煮」、火を使わない「ヨーグルトの冷たい簡単スープ」、母が北京にいたとき社宅の門番の父親(自称・元蒋介石の料理人)に習った「豚肉の中国風お茶漬」など、思わず作ってみたくなるレシピ(図とかはなくて文章で簡単に説明してあるだけだが)も満載。

エピソードの中では「白い御飯 その1」に書かれた著者の姉の弁当事件が楽しい。昭和二十年代中頃、今日のお弁当はカレー・ライスだと言われてうきうきしながら幼稚園へ行った姉。ところが、お昼になってアルマイトの弁当箱を開けてみると、ただの白い御飯が入っているだけ。ショックを受けた姉はこれは絶対に自分のお弁当ではないと主張し、大騒ぎになったのだが、実は……という話。著者は「母の味」と題した文章に、姉と二人、母のことをにくったらしい女だったよねと言いあうと書いていたが、この弁当事件を知るとチャーミングな人だったのではないかと思う。

<DATA>
タイトル:『待つこと、忘れること?』
出版社:平凡社
著者:金井美恵子
価格:1,680円(税込)

次ページではシンプルだけどゴージャスな夕食をご紹介!

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