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通勤快読!軽妙洒脱な家族小説(2ページ目)

ここ数ヶ月の新刊の中から、軽妙洒脱な家族小説をご紹介します。1話完結なので、通勤・通学時に読むのにぴったり!

石井 千湖

執筆者:石井 千湖

話題の本ガイド

困った叔母さん! でも好きにならずにはいられない山本幸久『美晴さんランナウェイ』

美晴さんランナウェイ
27歳未婚、定職ナシ、男を見る目ナシ。美人だがトラブルメイカーの居候・美晴さんを中心にした、ファニーでキュートなホームドラマ。
次に紹介するのは、これまたある家族のエピソードを綴った連作『美晴さんランナウェイ』。27歳未婚、定職ナシ、男を見る目ナシ。美人だがトラブルメイカーの居候・美晴さんが巻き起こす騒動を、中学生の姪・世宇子(ようこ)の視点で描く。

第1話「三中だけセーラー服」は、世宇子の祖母の葬儀の日から始まる。美晴さんは喪服を着ている以外はいつも通り。と、見えたのだが、世宇子と弟の翔に手伝わせ、行方をくらましてしまうのだ! 自分の母親の通夜にも葬式にも出席しないで。

タイトル通り美晴さんは何か自分にとって都合の悪いことがあるとサッと逃げ出してしまう。特に冠婚葬祭など行事への出席率は最低。周囲にとっては大迷惑だが、なぜか憎めない。ずっと年下の世宇子や翔にも「しょうがないな」という感じで愛されているのだ。

読者も第1話のラストを読んだ瞬間に、美晴さんを好きになってしまうはず。母親の葬式に出ないで、美晴さんが向かった先とは……。どうぞ読んで確かめていただきたい。淡々と描かれているからこそ、思わずホロッときてしまう。他の家族の描き方も楽しく、特にオカルト雑誌マニアの翔は、ヘンテコな拳法を通信教育で習ったり、怪しいグッズを通販で買って亡くなったお祖母ちゃんと話そうとしたり、行動のひとつひとつが可笑しくてかわいい。

<著者の他の作品を読むなら>
ハードカバーは持ち歩くのにちょっと……、という方には『笑う招き猫』がオススメ。身長差30cmの凸凹漫才コンビ、「アカコとヒトミ」。芸能事務所にスカウトされたものの、初めてのライブでは全く受けず、おまけに先輩芸人にセクハラされて、思わず殴り倒してしまう。性格も家庭環境も全く違うけれど、なぜか一緒にいると楽しい。ふたりの女の子の友情と仕事を痛快に描いた青春小説だ。

<DATA>
タイトル:『美晴さんランナウェイ』
出版社:集英社
著者:山本幸久
価格:1,575円(税込)

<DATA>
タイトル:『笑う招き猫』
出版社:集英社
著者:山本幸久
価格:580円(税込)

【関連リンク】
「人と作品  中島京子と『だいじなことはみんなアメリカの小学校に教わった。』」…『有鄰』に掲載されたインタビュー。

「作家の読書道:第50回 山本幸久」…「WEB 本の雑誌」に掲載されたインタビュー。

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