ここ数ヶ月の新刊の中から、軽妙洒脱な家族小説をご紹介。1話完結なので、通勤・通学時に読むのにぴったり!

似てないようで似ている姉妹中島京子『桐畑家の縁談』

桐畑家の縁談
似てないようだけど人づき合いに不器用なのは同じ。そんな姉妹の恋愛と周囲のユニークな人々を丁寧に描いた連作。
大企業に就職したにもかかわらず、二度の転職を経て失業。実家にいづらくなって、妹・佳子の部屋に居候している露子。結婚を考えるなら好条件の恋人もいるが、今ひとつ関係がしっくりいってない。そんなときに地味で変わり者の佳子が結婚すると言いだして——。中島京子の『桐畑家の縁談』は、見かけは似てないけれど、繊細で不器用なところは似ている姉妹の、恋と結婚にまつわる出来事を描いた連作だ。

大きな事件は起こらないけれど、ひとつひとつのエピソードの描き方がユニークで印象に残る。例えば、露子と恋人の研修医・渡辺のマンネリ気味のセックスと部屋でかかっているテレビのセリフが重なる場面(第3話「白身魚のポモドーロソース」)。また、佳子が勤め先の日本語学校で毎日小銭の計算を間違え、そのことによって台湾人留学生のウー・ミンゾンをいつのまにか好きになっていることに気づく場面(第4話「檳榔(びんろう)」)。

前者は露子が恋人との関係に抱いている漠然とした不満をリアルに感じさせるが、ドロドロはしていなくて笑える。後者は「恋って意識しないで落ちるものなんだなあ」ということをこれまたさりげなく感じさせて秀逸。

<著者の他の作品を読むなら>
ハードカバーは持ち歩くのにちょっと……、という方には『FUTON』がオススメ。田山花袋の『蒲団』を別の登場人物の視点で描いた「蒲団の打ち直し」という作中作に、その作者であるアメリカ人の花袋研究者・デイブと奔放な教え子・エミの恋の行方、エミの曽祖父の戦時中の悲恋の記憶を重ね合わせるという凝った構成。フトンが吹っ飛ぶ(本当に!)傑作だ。

<DATA>
タイトル:『桐畑家の縁談』
出版社:マガジンハウス
著者:中島京子
価格:1,575円(税込)

<DATA>
タイトル:『FUTON』
出版社:講談社
著者:中島京子
価格:680円(税込)

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